2020 年 49 巻 3 号 p. 133-137
48歳女性.2カ月前からの労作時呼吸困難と両側下腿浮腫を主訴に来院し,心臓超音波検査にてバルサルバ洞の拡大,大動脈弁逆流,弁尖直上のflapを認め,心臓同期造影CTにて弁尖直上から両側総腸骨動脈分岐部までのStanford A型大動脈解離を認めた.右冠動脈は偽腔から分岐し,右冠尖と無冠尖の交連部が解離していた.左冠動脈は真腔から分岐していた.心不全加療後,partial remodeling法による自己弁温存基部再建術と上行弓部大動脈人工血管置換術,右冠動脈バイパス術を施行した.手術時間は402分,人工心肺時間が234分,大動脈遮断時間167分,選択的脳灌流時間は109分で手術を終了し,術後経過良好で術後12病日に合併症なく独歩退院となった.術後,大動脈弁は形態に問題なく,逆流は良好に制御された.自己弁温存基部再建術は技術的習熟を要するが,本症例ではpartial remodelingを施行し,良好な成績を得たため報告する.