症例は35歳,男性.一尖弁によるIV/IV度の大動脈弁閉鎖不全症(AR)と大動脈基部,上行大動脈拡大に対して手術加療目的に当科へ紹介となった.大動脈弁は左側方(左冠動脈口と右冠動脈口の間)のみ正常な交連部が存在するunicommissural typeであり,前方・後方には左側方交連部より低い位置に石灰化した未発達のrapheが存在した.手術は,正常な交連部に180度相対する弁尖自由縁中央部を新たな交連部に設定し,弁腹に自己心膜を補填することで弁尖自由縁を温存して二尖化し,自己弁温存基部置換術,部分弓部置換術を行った.術後は有意な合併症なく経過し,術後17日目で退院した.一尖弁の二尖弁化に関する術式は以前にも報告があるが,新たな試みとして弁尖自由縁を温存し,弁腹のみに自己心膜を補填することで,良好な中期成績を得たので報告する.