2020 年 49 巻 4 号 p. 151-154
[目的]日本心臓血管手術データベース(JCVSD)先天性部門は現在,参加施設数約120施設となって全国の施設をほぼカバーしている.今回,われわれは2017~2018年のデータを用い,頻度の高い20術式の死亡率と術後合併症の検討を行った.また,STS-EACTSで現在使用されているSTAT Mortality Categoriesに基づき,それぞれのcategoryでの死亡率を算出した.[方法]JCVSD先天性部門のデータから2017~2018年の先天性心疾患手術データを抽出し,20術式についての死亡率(90日または在院)および合併症率を算出した.また,STAT Mortality Categoriesに基づいて術式の分類を行い,それぞれのcategoryにおける本邦での在院死亡率を算出した.[結果]心房中隔欠損閉鎖術は死亡率0%,心室中隔欠損閉鎖術の在院死亡率は0.2%,ファロー四徴症手術,完全房室中隔欠損症修復術,大動脈縮窄複合修復術,ラステリ手術,両方向性グレン手術,フォンタン手術などの死亡率は3%以下と良好であった.体肺動脈シャントの死亡率は4.9%,総肺静脈還流異常症,ノーウッド手術の死亡率はそれぞれ11.1%,15.7%であり,2015~2016年と同程度であった.STAT Mortality Category別の死亡率ではcategory 1~5でそれぞれ0.3%,2.7%,2.9%,5.9%,15.5%であり,2013~2016年のSTSの報告とほぼ同程度の死亡率であった.[結論]JCVSDの分析により,2017~2018年に本邦で行われた先天性心疾患の主な術式の死亡率ならびに合併症の頻度,STAT Mortality Category別の死亡率を明らかにした.これらの統計は日本全体の経年動向,ならびに他国との成績比較などの基盤として重要な役割を果たすと考える.