2020 年 49 巻 6 号 p. 344-348
心尖部左室瘤を伴う肥大型心筋症は,心室性不整脈や血栓塞栓症による突然死の危険性が高いとされている.今回われわれは,同疾患に対する手術例を経験したので報告する.症例は67歳男性.健診での心電図異常を契機に精査を受け,心尖部瘤を伴う左室中部閉塞性肥大型心筋症と診断された.無症状で,閉塞部の圧較差は約30 mmHgだったが,心尖部瘤内に血栓を認めた.抗凝固療法により血栓は溶解したが,自然予後不良が予測されたため,手術の方針となった.手術は,合計13.7 gの心筋切除術およびcryoablationを施行した.術後の経胸壁心エコーおよびCTでは左室中部閉塞の解除を認めた.術後に完全房室ブロックを生じ,永久ペースメーカー植え込み術を要したが,術後21日目に軽快退院した.術後2年6カ月現在,経過良好である.