日本心臓血管外科学会雑誌
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第50回日本心臓血管外科学会学術総会 卒後教育セミナー
急性心筋梗塞後心室中隔破裂:拡大サンドイッチ法を中心に
浅井 徹
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2021 年 50 巻 1 号 p. 1-i-1-viii

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抄録

心室中隔破裂VSRは,急性心筋梗塞後の致死的な合併症である.発症時期は,STEMI発症後第一病日と第三から第五病日の間の二峰性にピークがある.経皮的VSR閉鎖術は,適応は限られ外科的VSR閉鎖術が根治治療である.VSR外科的閉鎖術の変遷は,1957年Cooleyの報告以来,さまざまな術式が登場し普及したが,近年でも全手術死亡42.9%,STEMI発症一週間以内の症例では54.1%であった.また,後壁型VSRの成績は前壁型VSRより成績不良であった.これらの問題解決のために,経右室切開拡大サンドイッチ法は開発された.左前下行枝または右冠動脈後下行枝の近傍を平行に右室切開し,欠損部を同定し壊死心筋を一部切除して左室内へ達する.6 cm径のパッチにあらかじめ大きな針8針ほどマットレスをかけ,辺縁から遠く放射状に左室の外の中隔と自由壁へ針を抜く.自由壁外は大きなフェルトプレジェットを,右室側に抜いた針は左室側と同様のパッチを通して中隔を挟む.最後の糸を結ぶ前に穿孔とデブリでできた欠損部に糊を入れて閉鎖する.この術式は超急性期で短絡再発が少なく高い救命率が報告された.STEMI発症後急性期であっても後壁型VSRでも手術は重度心不全の進行する前に速やかに行うことが重要である.

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