2021 年 50 巻 1 号 p. 65-68
症例は55歳男性.来院4時間前,仕事中に前胸部を打撲し,前胸部痛が持続するため前医を受診した.胸腹部CTで胸骨横骨折および外傷性急性大動脈解離(Stanford A型,DeBakeyII型)を認め,他の出血性合併損傷を認めなかったため緊急で上行置換術を施行した.経過は良好で術後19日目に独歩退院した.病理組織所見では嚢状中膜壊死を認めず,外傷性大動脈解離の所見であった.高度の粥状動脈硬化性変化を有する場合,高エネルギー外傷でない場合においても大動脈損傷の可能性を念頭に置くべきである.外傷性大動脈損傷では,合併損傷を考慮して症例ごとに治療介入の至適時期を見極めることが重要である.