日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
[成人心臓]
腋窩動脈を中枢側吻合部として用いた MICS-CABG の1例
川﨑 有亮小澤 達也末永 悦郎
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 50 巻 2 号 p. 73-77

詳細
抄録

症例は糖尿病加療中の73歳男性.胸部違和感を主訴に当院紹介受診した.冠動脈造影(CAG)にて前下行枝(LAD)は#6近位部で完全閉塞し,右冠動脈(RCA)からの側副血行によりLADと灌流域の大きい対角枝(D1)が造影されていた.カテーテル治療を試みるもガイドワイヤーが通過せず,手術目的で当科紹介となった.患者は家業への早期復帰を切望し,LAD, D1に対するMICS-CABGを選択した.術前の胸部CTで上行大動脈は42 mmに拡大していたため,D1へのバイパスは左腋窩動脈をInflowとした大伏在静脈グラフト(SVG)を使用することとした.手術は左乳房下縁を約8.5 cm切開し第4肋間にて開胸した.直視下および胸腔鏡補助下に左内胸動脈(LITA)を採取し,同時に大腿から内視鏡下にSVGを採取した(EVH法).左腋窩動脈を露出し,SVGの中枢側を吻合した.胸腔鏡での観察下にSVGを左胸腔内に誘導し,心拍動下にD1と吻合した.次にLITAをLADに吻合した.術中のグラフトフローは良好であった.術後経過は良好で術後5日目に軽快退院となった.冠動脈CTでグラフトの良好な開存を確認した.上行大動脈拡大を伴う症例でMICS-CABGによる2枝バイパス術を行い良好な結果を得た.腋窩下動脈は上行大動脈を使用できない場合のオプションとして有用と思われた.

著者関連情報
© 2021 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top