日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
EVAR を第一選択とした破裂性腹部大動脈瘤の治療成績
林 潤黒田 吉則大塲 栄一水本 雅弘山下 淳中井 信吾小林 龍宏落合 智徳内田 徹郎
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2021 年 50 巻 6 号 p. 357-362

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抄録

[背景]破裂性腹部大動脈瘤の外科治療における開腹手術とステントグラフト内挿術(EVAR)の無作為比較試験であるIMPROVE trialでは,早期ADL回復においてEVARの優位性が報告された.[目的]解剖学的適合症例は,基本的にEVARを第一選択とする当施設の破裂性腹部大動脈瘤の治療方針を後方視的に検討した.[対象と方法]2013年1月から2020年12月までの8年間に緊急手術を施行した破裂性腹部大動脈瘤35例を開腹手術群(O群)17例とEVAR群(E群)18例に分け,手術成績を比較検討した.平均年齢はO群76.2±8.6歳,E群78.8±6.5歳[p=0.319],男性は開腹群15例(88.2%),EVAR群15例(83.3%)[p=0.679]であった.開腹手術を選択した理由は,ショートネックやアクセス不良等の解剖学的理由が14例(82.4%)であった.[結果]E群に病院死亡はなかったが,O群では5例(29.4%)に死亡を認めた[p=0.013].死亡例はいずれもEVAR困難な解剖学的形態ゆえ開腹手術を選択した症例であった.遠隔期の大動脈関連死亡は,急性A型解離を発症したE群の1例に認めた.[結論]破裂性腹部大動脈瘤に対するEVAR first-line strategyに基づいた外科治療はおおむね許容しうる成績であった.一方,破裂性腹部大動脈瘤の約半数はEVAR困難な解剖学的形態を呈するため,EVAR時代においても開腹手術の重要性は揺るがないと考える.

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