2022 年 51 巻 4 号 p. 217-220
症例である76歳女性は大動脈弁閉鎖不全症および僧帽弁閉鎖不全症に対して2弁置換術を施行され,術後経過も良好であったが,術後33カ月で突然の息切れが出現し,大動脈弁位人工弁の構造的弁破壊による重症弁逆流,血液検査で溶血性貧血の所見,そして大動脈弁逆流ジェットが僧帽弁位生体弁ステントポストへ衝突と診断された.傍人工弁逆流はなく同部位が原因による溶血性貧血を疑われた.大動脈弁再置換術を行い,同時に左室流出路に不適切に突出したステントポストが視認された.術後は心不全および溶血性貧血から完全に回復した.外巻き生体弁の早期構造的弁破壊の報告は稀ではないが,遍在性逆流によるジェットは弁下組織のいかなる構造物とも衝突する可能性がある.今回われわれは,稀な構造的人工弁破壊を伴う逆流ジェットによる溶血性貧血について報告する.