2022 年 51 巻 4 号 p. 213-216
症例は81歳男性.難治性右胸部皮下膿瘍の加療中,起因菌不明である感染性腎動脈下腹部大動脈瘤を診断された.抗生物質の点滴を開始したが感染所見は遷延し,大動脈感染巣や動脈瘤形態に改善が得られなかった.感染制御と大動脈瘤破裂回避を目的として,腎動脈下腹部大動脈人工血管置換術および大網充填術,感染巣除去術を施行した.採取標本における病理組織検査にて感染性大動脈瘤に矛盾しない所見が得られた.抗生物質の投与を継続していたが,術後経過にて感染所見の増悪あり,全身CT検査より皮下膿瘍拡大および粟粒結核が指摘された.このため,皮下膿瘍や喀痰,尿の抗酸菌培養検査およびTuberculous (Tb) - real time polymerase chain reaction (PCR) 検査を行ったところ,皮下膿瘍よりTb-PCR検査にて結核菌を検出した.採取標本の再評価にて壊死組織周囲の紡錘形細胞の柵状配列や類上皮細胞,多核巨細胞の出現を伴う肉芽腫性炎を認め,結核性感染性大動脈瘤に矛盾しない所見が得られた.抗結核療法を開始し,炎症所見や右胸部皮下膿瘍の著明な改善が得られ,術後39日目に独歩にて自宅退院となった.結核性感染性腎動脈下腹部大動脈瘤に対し,腎動脈下腹部大動脈人工血管置換術および大網充填術,感染巣除去術による外科的加療と抗結核療法を併用し,感染制御や大動脈瘤破裂回避が可能であった1手術例を経験した.