心臓原発の乳頭状弾性線維腫は比較的稀な腫瘍であり,心臓超音波検査などで偶発的に発見されることが多い.肥大型心筋症の経過観察中に心臓超音波検査で多発性乳頭状弾性線維腫が見つかり,自己弁温存腫瘍切除術を施行した症例を報告する.患者は71歳男性で,右冠尖の正中から左冠尖寄りの心室中隔に10mm大の腫瘍があり,左冠尖,右冠尖の左室側にもそれぞれ3mm大の腫瘍が付着していた.患者に自覚症状はなかったが,可動性の腫瘍であったため,塞栓予防および確定診断のため手術適応とした.心室中隔の腫瘍は周囲の心内膜および一部心筋とともに切除し,弁尖部腫瘍は可及的に切除し,自己弁は温存した.いずれも病理組織学的には乳頭状弾性線維腫であり,術後の経過は良好であった.