2023 年 52 巻 6 号 p. 387-391
BCOR遺伝子異常肉腫はかつてEwing様肉腫として扱われていた一群で,2020年以降骨軟部組織発生未分化小円形細胞肉腫に分類される予後不良な悪性腫瘍である.きわめて稀であり一定の治療法も確立しておらず外科治療に関する報告は少ない.なかでも心内浸潤した症例に対しての治療報告はいまだない.症例は14歳女児.左上腕痛を主訴に受診した.CT検査で左腋窩と左胸腔内に腫瘍を認め,それぞれ生検の後BCOR遺伝子異常肉腫と診断した.化学療法を予定していたが,心臓超音波検査で左心房内浸潤が明らかになり,塞栓症や僧帽弁への嵌頓による頓死リスクが高いため外科的切除の方針となった.腫瘍は左上肺静脈から直接浸潤し左房内へ進展していた.右肺転移が疑われており左肺を温存しつつ腫瘍を一塊で切除しようと考えたが,腫瘍が下葉気管支近傍へ浸潤しており,分割せずに摘出することは困難であった.心外への播種も懸念し,血管内で可能なかぎり腫瘍を切除した.残存腫瘍はあるが術後速やかに化学療法を開始し,腫瘍は縮小,今後腫瘍の全摘出を予定している.予後不良かつ希少なBCOR遺伝子異常肉腫の心内浸潤例に対し良好な経過を辿った1例を経験したため報告した.