2023 年 52 巻 6 号 p. 406-411
三尖弁は非対称的な3次元構造であり,posteroseptal portionが最も心尖部寄りにあり,anteroseptalportionが最も心尖部から遠くにある.完全内臓逆位では心腔内構造は正常解剖心の鏡像となるが,posteroseptal portionが最も低い位置に,anteroseptal portionが最も高い位置にあることは変わらない.そのため完全内臓逆位の症例における三尖弁形成術において,通常使用される3次元構造のrigid ringを裏返して使用するとposteroseptal portionが高い位置にanteroseptal portionが低い位置に誘導され,弁尖のcoaptationが不良になる恐れがある.今回,右胸心,完全内臓逆位における三尖弁閉鎖不全症,僧帽弁閉鎖不全症,慢性心房細動に対してflexible bandを用いた三尖弁輪縫縮術,僧帽弁形成術,左房縫縮術,左心耳閉鎖術を施行したので文献的考察を加えて報告する.