2024 年 53 巻 1 号 p. 1-5
症例は29歳男性,出生時に心雑音があり,先天性大動脈二尖弁を指摘されていた.11歳時にRoss手術を受けている.その後,大動脈基部拡大とmoderateの大動脈弁閉鎖不全(AR)および肺動脈弁閉鎖不全が指摘されたため,当科を紹介受診した.心臓CTで大動脈弁のgeometric heightは保たれており,術中所見でも大動脈弁位肺動脈弁葉の性状は良好であり,Valsalva graft 28 mmを使用した自己弁温存基部置換術(Reimplantation法)および肺動脈弁置換術(インスピリスRESILIA大動脈弁25 mm)を施行した.術後ARは消失し,患者は術後8日で退院し,1年後の外来でも心エコー上ARの再発を認めなかった.先天性心疾患手術後に長期生存する症例が蓄積される中で,Ross手術術後の大動脈基部拡大が問題になることが近年判明してきた.本症例では弁葉の性状に問題なく,通常の成人症例とまったく同様にReimplantationを施行し得た.若干の文献的考察を加えて報告する.