日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告[成人心臓]
カテーテルアブレーション中に生じた僧帽弁乳頭筋断裂の1例
笹原 聡豊大西 義彦柴田 講贄 正基小原 邦義
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2025 年 54 巻 2 号 p. 57-60

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抄録

乳頭筋断裂による急性僧帽弁閉鎖不全症は急性心筋梗塞に伴う重篤な合併症として知られ,特に後内側乳頭筋に生じることが多い.本症例は41歳男性.上室性頻拍症に対するカテーテルアブレーション治療中に乳頭筋断裂による急性僧帽弁閉鎖不全症を生じた.原因はカテーテル操作中に腱索が絡まり,過度な牽引で乳頭筋が断裂したと考えられた.患者はエホバの証人の信者であり,輸血を拒否したが,希釈自己血貯血およびセルセーバーと人工心肺の使用は承諾したため,手術を実施した.僧帽弁の後内側乳頭筋が断裂していて,前尖(A2)に断裂した乳頭筋と腱索が付着していた.また前尖は弁腹にかけてV字状に裂開していた.断裂した乳頭筋を含む僧帽弁前尖を切除し,機械弁を用いた僧帽弁置換術を実施した.周術期に機械的循環補助を必要とせず,無輸血で良好な経過で退院された.本症例はカテーテルアブレーション中に乳頭筋断裂が生じた稀な合併症であり報告する.

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