2025 年 54 巻 3 号 p. 105-108
心臓血管手術歴や大動脈高度石灰化のある患者の弁膜症治療は外科的治療のリスクが高い.今回,経皮的僧帽弁接合不全修復術の合併症をきたした症例に対して準緊急で大動脈遮断を行わずに僧帽弁置換術を施行した.症例は31年前に冠動脈バイパス術の既往がある83歳男性.重症僧帽弁閉鎖不全症による心不全を生じた.経皮的僧帽弁接合不全修復術を施行したが弁尖に交絡し僧帽弁狭窄症のため循環動態不安定となった.陶器様大動脈と冠動脈バイパスグラフト存在のため大動脈遮断困難と判断し,心室細動下右側開胸鏡視下僧帽弁置換術を施行し,良好な経過を得た.心室細動下側開胸手術は大動脈遮断困難である症例の手術戦略として有用と考えられた.