2025 年 54 巻 3 号 p. 118-121
症例は73歳女性.急性前壁心筋梗塞に伴う心室中隔穿孔(VSP)を発症し,緊急手術となった.左前下行枝(LAD)より2 cm程度離して右室からVSPにアプローチし,15 mm程度の穿孔部を認めた.LADを損傷しないように注意して拡大サンドイッチ法で閉鎖を行った.その後,壊死心筋のやや中枢側でLITA(左内胸動脈)-LADの冠動脈バイパスを施行した.術後経過は良好で,術後5日目に施行した経胸壁心臓超音波検査で明らかな遺残短絡を認めず,また冠動脈CTではLITA-LADを含む全バイパスの良好な血流を認め,術後12日目に自宅退院となった.VSP修復に伴う責任病変への血行再建の是非は議論が分かれているが,本症例の経験から完全血行再建を検討する価値があると考えられた.