症例は56歳男性,7年前他院で遠位弓部大動脈瘤に対しtotal debranch TEVARを施行.翌年人工血管感染,左鎖骨下動脈グラフト抜去+腋窩-腋窩bypass術を施行.創部完治せず,膿汁を伴う左頸部+胸骨正中切開部皮膚瘻を認め紹介された.術前PET-CTでは左総頸動脈グラフト,上行大動脈に留置されたステントグラフト~正中創・左頸部創まで感染の波及を認めた.手術はまず仰臥位で胸骨ワイヤーを抜去した.左頸部で総頸動脈を露出した後,右半側臥位で左後側方切開を行った.左総大腿動脈送血,総大腿静脈+主肺動脈脱血で体外循環を開始,直腸温25℃まで中心冷却した.Th 10レベルで下行大動脈を遮断,近位側大動脈を切開しステントグラフトを抜去.弓部分枝に内腔からカテーテルを挿入し,順行性脳灌流を開始,順行性心筋保護液を注入した.リファンピシン浸漬3分枝J graftで上行~弓部~下行大動脈置換を行った.前回の左総頸動脈グラフトを抜去し,遠位でリング付きGore-Tex graft 8 mmを吻合,再建した.食道裂孔経由で有茎大網を充填し,手術を終了した.体外循環時間 331分,心虚血 166分,順行性脳灌流 182分,手術時間は14時間37分であった.術後6週間抗菌薬加療も継続,前胸部・左頸部瘻を直接閉鎖し,退院した.