2025 年 54 巻 4 号 p. 159-162
アルカプトン尿症(AKU)は,発症率が10万人から25万人に1人と報告される稀な遺伝疾患であり,ホモゲンチジン酸尿,関節炎,黒色色素沈着の3徴が特徴的である.今回,もともとAKUと診断されていた72歳男性患者が重症大動脈弁狭窄症と診断され,外科的大動脈弁置換術を施行された.術中所見では,大動脈の黒色変化および大動脈弁の黒色石灰化を認めた.機械弁On-X(On-X Life Technologies, Austin, TX, USA)を移植されたが,術後1年2カ月時点で問題を認めていない.AKUによる大動脈弁の黒色石灰化は特徴的であり,心臓手術が診断の契機となることがあるため記憶すべき所見である.AKUでは石灰化を来しやすく,生体弁移植後の構造的弁劣化の可能性が報告されていることから,機械弁の使用も考慮される.文献的考察を加えて報告する.