2025 年 54 巻 5 号 p. 233-236
症例は48歳女性,ストレスがたまると針を前胸部に刺す自傷を繰り返し,過去に3回の開胸手術,8回以上の針を抜く処置を施行していた.今回は左前胸部に針を刺しその後持続する胸痛で受診した.針は皮下に埋没し体表からは確認できず,CTで皮下1 cmから右室内腔へ到達した長さ6 cmの針を認めた.心嚢液貯留は認めず循環動態は安定していたが,心拍動により針が前進し左室へ穿通する可能性,心損傷が拡大する可能性があり緊急で手術を施行した.開胸手術や針抜去の処置を繰り返しており縦隔は高度癒着が予想され,また開胸に伴う心損傷拡大のリスクが高く,人工心肺補助下で開胸した.経食道超音波で針の先端を確認し針が進まないように注意し開胸した.右室へ穿通している針を確認,針周囲へ4-0モノフィラメントプレジェット付きをU字に縫合し針を抜去した.抜去後,経食道超音波で心室中隔穿孔がないことを確認し手術を終えた.術後2日目でドレーン抜去,術後6日目にかかりつけの精神病院へ医療措入院となった.