2026 年 55 巻 4 号 p. 149-153
症例は83歳男性.P2逸脱による中等度僧帽弁閉鎖不全症(MR)で経過観察中に咳嗽と呼吸困難が出現し,近医で肺うっ血と右胸水を指摘された.軽度炎症反応を伴い気管支炎として抗菌薬が投与されたが改善せず,感染性心内膜炎(infective endocarditis: IE)が疑われ当院紹介となった.血液培養2セットはいずれも陰性で,経食道心エコーでは既知のP2腱索断裂によるsevere MRを認めたが明らかな疣贅は認めなかった.頭部MRIや胸腹部造影CTでも塞栓性病変を認めず,当初IEは否定的と判断した.新規心房細動による心不全増悪と考え,待機的に僧帽弁形成術(hourglass resection),Maze手術および左心耳閉鎖術を施行した.術中,前尖から弁輪部に発赤・浮腫を認めIEが疑われ,切除弁培養でLacticaseibacillus paracaseiが検出された.患者は同菌を含む乳酸菌飲料を長期間摂取しており,プロバイオティクス関連IEと診断した.術後アンピシリン6週間投与で治癒した.本症例では一般に安全と考えられているプロバイオティクス摂取であっても,高齢者や素因を有する宿主ではIEを引き起こす可能性があることを示唆する.また,血液培養陰性例でも弁組織培養からIEの診断に至る症例があることを示した.