日本心臓血管外科学会雑誌
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心臓手術後両側横隔神経麻痺の2症例
種本 和雄津島 義正小長 英二畑 隆登
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1988 年 18 巻 2 号 p. 158-161

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抄録

心臓手術後の両側構隔神経麻痺の2症例を経験した.2例とも術後1日目の気管内チューブ抜去直後より胸式奇異呼吸と多呼吸が続いたが,動脈血ガス所見は比較的良好であったため,座位を維持し酸素を投与するのみで保存的に経過観察した.症例1は術後10日目には呼吸状態は改善したが,症例2は経過観察中,術後17日目に突然呼吸停止・心停止を起こし,虚血性脳障害を残したまま約1年後に呼吸不全にて死亡した.両側横隔神経麻痺は心臓手術後の合併症としてはまれなものであるが,特徴的呼吸パターン,レントゲン写真所見,胃内圧・食道内圧同時測定などで早期に診断し,適切な呼吸管理を行うことが重要である.とくに予備力の少ない高齢者の場合には早期より十分な呼吸管理を行うことが望ましい.また局所冷却にさいして,等張液の氷切片を液体に浮いた状態で使用することが予防に有効ではないかと思われた.

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