日本心臓血管外科学会雑誌
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大動脈・腸骨動脈閉塞に伴う腹腔内血流スチール現象の出現について
桜沢 健一岩井 武尚
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1990 年 20 巻 2 号 p. 221-225

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抄録

大動脈腸骨動脈閉塞症において下肢と腹腔内臓器との血液の奪いあいにより内臓虚血を呈する,いわゆる“aortoiliac steal”現象について考察を加えた.こうした症候は下肢への主たる側副血行路が腹腔内臓動脈に由来する例に発症しやすいと考えられるが,本領域血行再建手術65例中,血管撮影上そうした所見を示したものは2例(3%)のみで,両例とも内臓虚血症状はなかった.また下肢血行再建術に伴う内臓虚血について経肛門的直腸内ドップラー法を用い術中の骨盤内臓血行動態の変化を観察した.その結果,下肢血行再開後も内臓血流は保たれ,さらにバイパス術により直接的に腹腔内血行が改善される可能性も示唆された.内臓虚血の発症は腹腔動脈・上腸間膜動脈そのものの狭窄性病変の有無が重要な因子であり,下肢血行障害例の治療にあたっては腹腔内臓循環にも十分な配慮を払う必要があると思われた.

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