1990 年 20 巻 2 号 p. 226-229
Three channelを呈した解離性大動脈瘤(DeBakey IIIb型)の症例を経験したので報告した.症例は70歳男性.背部痛を主訴に胸部X線写真,CT検査にて解離性大動脈瘤と診断された.大動脈造影で左鎖骨下動脈起始部末梢にentryを有するDeBakey IIIb型の解離性大動脈瘤と判明した.降圧療法を行ったが,入院後五日目に突然瘤破裂をきたし死亡した.剖検で慢性化した解離性大動脈瘤の外側解離壁に新たな解離を生じ,three-channeled dissectionを呈し同部で破裂していた.Three channelを呈する症例は世界でも非常に稀であり,われわれが調べえたところでは,これまでに自験例を含め8例にすぎない.診断,治療の困難さを今回痛感した.