日本心臓血管外科学会雑誌
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Cooing murmurを伴う僧帽弁位生体弁機能不全の1手術治験例
宮入 剛小塚 裕村上 龍司中島 淳中原 秀人水野 明
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1991 年 20 巻 5 号 p. 857-860

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抄録

症例は47歳女性で,10年前MRに対して生体弁(Carpentier-Edwards 31-M)による弁置換術を受けた.術後8年目にcooing murmurを生じ,約2年の経過で心不全症状の増悪を認めた.心音図の周波数分析では322Hzの一定の高い周波数を記録した.心エコー検査では拡張期に生体弁弁葉の一部がステント外に出て振動する異常所見を認め,弁葉の亀裂が疑われた.心カテーテル検査では僧帽弁位生体弁の閉鎖不全とともに狭窄所見も認められたが,弁葉の可動性は保たれており,術前には狭窄の原因は不明であった.同時にIII度の大動脈弁閉鎖不全も認められた.患者は初回手術から10年6か月目に僧帽弁再置換術と大動脈弁置換術を施行された,摘出した生体弁では一弁葉に亀裂を認め,これが生体弁の閉鎖不全の原因であり,同時にcooing murmurの音源と考えられた.生体弁の弁葉の可動性は保たれていたが,左房側弁輪に求心性のpannus形成を認め,これによる狭窄と考えられた.

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