抄録
左室内に発生する粘液腫はきわめて珍しく,しかもその再発例は調べた限り本邦では報告をみない.われわれは左室内粘液腫摘出術後同部位に再発,初回手術後約2年半で再手術を行った症例を経験した.症例は28歳,女性.25歳時に左室内粘液腫と診断され腫瘍摘出術および僧帽弁置換術を当科で行った.術後経過は良好であったが,術後約2年半時に外来で人工弁clickの欠落に気づき心エコー検査を施行したところ,左室内に腫瘤を認めた.経時的に増大傾向を示したため再入院となった.心エコーおよび肺動脈造影検査で左室内可動性腫瘤を認あ粘液腫再発と考え,再手術を施行した.術中所見では左室後壁心筋に浸潤する形を呈していたが,迅速病理診では粘液腫が疑われた.すべて摘出することは不可能であった.病理組織学的には良性であると診断されたが,発育形態からみれば臨床的に悪性であると診断した.