大動脈瘤内の血栓動態を評価する目的で,真性大動脈瘤13例,解離性大動脈瘤28例(手術前17例,術後解離腔遺残11例)に対し,
111In標識血小板シンチグラフィー(血小板シンチ)を施行し,fibrino-peptide A (FPA), FDP-Eを同時に測定した.これらを病型,病期により比較,検討した.血小板シンチのRI集積強度は解離性大動脈瘤では,発症または術後早期には強く,経過とともに減衰していく傾向を示した.FPA, FDP-Eは病型による一定の傾向はなく,正常値にとどまる例からFPAで最高182.0ng/ml, FDP-Eで最高2846.0ng/mlと値はさまざまであった.しかし,解離性大動脈瘤では発症後または術後の早期に高値を示し,経過とともに正常値に復していく傾向を示した.血小板シンチのRI集積が強い症例のFPA, FDP-Eは,RI集積が弱いか認めない症例の値と比較して,有意に高値を示した(FPA:
p<0.05, FDP-E:
p<0.001).血小板シンチは
in vivoにおける血小板の集積を示しており,血栓活性の指標として有用だが,この所見とFPA, FDP-Eの変動が一致することは,ともに大動脈瘤内での血栓活性の指標として有用なものと考えられる.よって,これらの結果を知ることにより,瘤内の血栓動態を評価することができ,合併症の発生や予後の予測に有用なものと考えられた.
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