日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
腎動脈下腹部大動脈瘤手術に伴う血液生化学的変化
血中過酸化脂質の変動について
羽鳥 信郎奥田 恵理哉瓜生田 曜造志水 正史芳賀 佳之吉津 博田中 勧
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 20 巻 9 号 p. 1483-1488

詳細
抄録
腎動脈下腹部大動脈瘤の10手術症例を対象とし,術中の大動脈遮断・再灌流に伴う血中の過酸化脂質(MDA)の変動を検討するため補体系や,他の血液生化学的検査とともに術前,術中,術後7日まで経時的に測定した.大動脈遮断時間は,平均63±18分であった.血中MDAは,術前値(3.2±0.7nmol/ml)に比し,大動脈遮断解除20分(2.3±0.6nmol/ml,*p<0.05 vs術前値),40分(2.3±0.5nmol/ml*)で一時的に低下した.C3は,遮断前より低下し術後5日目に回復した.一方,TPとHtは,術前値に比し術中,術後に低下し,さらに,TPとMDA, C3, Htの間には正の相関(p<0.01)がみられたことから,MDA, C3の低下は,血液希釈によるものと考えられた.全症例で全身の合併症は認められなかったものの,手術に伴うミオグロビン,CPK, LDH,アミラーゼ,乳酸等の一過性の上昇が示された.通常の腎動脈下腹部大動脈の一時的遮断・再灌流には,流血中にMDAが生じるような活性酸素の関与は少ないものと思われる.
著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top