日本心臓血管外科学会雑誌
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低心機能を合併した虚血性心臓病に対する冠動脈バイパス術
磯村 正久富 光一平野 顕夫犬塚 宏人鈴木 重光小須賀 健一大石 喜六
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1992 年 21 巻 1 号 p. 6-10

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抄録

術前に低心機能を示した虚血性心臓病 (IHD) に対し, 冠動脈バイパス術 (CABG) を行った16例について, 手術法, 術前, 術後の心機能の推移を検討した. 術前の冠動脈病変数は, 全例三枝病変で, 術前の左室駆出率 (EF) は40%以下, 心係数 (CI) は平均1.97l/min/m2であった. このうち動脈グラフトを用いたもの (AG群) 10例, 静脈グラフトのみを使用したもの (SVG群) 6例であった. 体外循環時間, 大動脈遮断時間, 末梢冠動脈吻合枝数は両群間に有意差を認めず, 人工心肺離脱時大動脈バルーンパンピングを必要としたものはSVG群1例で, 術後のカテコールアミンの使用率はSVG群に有意に多かった. 術後のCIはAG群, 3.1±0.4l/min/m2, SVG群3.3±0.3l/min/m2 (平均3.16l/min/m2)で, NYHAも全例I°~II°へ改善し, その改善度には両群間に有意差をみとめなかった. 以上の結果より, 低心機能を有するIHDに対するCABGにおいても, 動脈グラフトは安全かつ積極的に使用できるものと考えられた.

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