1992 年 21 巻 1 号 p. 11-16
虚血心再灌流障害の発生機序を明らかにすることを目的に, 細胞膜Na+-Ca2+交換機構の観点から実験的検討を行った. ラット摘出心を用いた isolated working heart model を使用した. 37℃-15分間の global ischemia の後, 再灌流の初期10分間の冠灌流液中Na+濃度, Ca2+濃度を段階的に変化せしめ, 再灌流後の心機能, 心筋代謝に及ぼす影響を検討した. その結果, 再灌流障害はNa+濃度25~135mMにおいて濃度依存性に軽減され, Ca2+濃度0.5~1.5mMにおいて濃度依存性に増悪した. また, 細胞膜Na+-Ca2+交換阻害物質として amiloride を再灌流の初期に投与した結果, 心筋障害は有意に抑制された. 以上の結果より, 再灌流障害発生機序の原因として細胞膜Na+-Ca2+交換機構の役割は重要であり, 交換阻害物質を投与し, Ca2+の細胞内流入を抑制することは, 再灌流障害の発生予防に有効な手段になりうると考えられた.