1992 年 21 巻 3 号 p. 300-303
動脈硬化症は全身性の進行性疾患であるため, 胸部大動脈瘤に虚血性心疾患を合併することは希ではない. したがって胸部大動脈瘤の手術成績の向上をはかるためには虚血性心疾患に対する正確な術前評価を加えた上での手術適応の決定, 手術手技, 補助手段の選択が非常に重要なものとなると思われる. 最近われわれは, 下行大動脈瘤および心室瘤に対し, 後側方切開からのアプローチと, 補助手段として肺動脈脱血・大腿動脈送血による部分左心バイパスを行い, 軽度低体温補助循環下に一期的に安全に手術を施行しえた. 本アプローチおよび補助手段は, 下行大動脈瘤切除とA-Cバイパス術を一期的に行う場合にも応用可能な, 有用な手段であると考えられる.