抄録
僧帽弁狭窄症における血栓形成要因を検討した. 左房内血栓群の左房径は平均値61.2mmであり, 非血栓群の46.4mmと比較し有意に大であった. また, 左房内血栓群と非血栓群とで, 術前の心拍出量を比較すると, それぞれ3.04l/min, 3.99l/minであり, 左房内血栓群の心拍出量は非形成群よりも有意に小さい傾向が認められた. 左房容積と心拍出量とから, 血流の左房平均通過時間 (MTTLA) を算出し比較した. その結果, 血栓形成群のMTTLAは6.2secであり, 非形成群の2.9secと比較して有意に延長しており, 左房内血流うっ滞の程度がより大きいと考えられた. したがって, 僧帽弁狭窄症においてMTTLAの延長は左房内血栓形成のリスクと考えられる.