日本心臓血管外科学会雑誌
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22 巻, 2 号
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  • 石川 進, 大谷 嘉己, 柳沢 肇, 大滝 章男, 坂田 一宏, 高橋 徹, 市川 秀昭, 佐藤 泰史, 相崎 雅弘, 森下 靖雄
    1993 年 22 巻 2 号 p. 73-76
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大動脈-大腿動脈バイパス術 (Ao-F群) 18例23肢と腋窩動脈-大腿動脈バイパス術 (Ax-F群) 26例38肢を対象とした. 術前造影で大動脈の閉塞, 50%以上の狭窄または鋸歯状の壁不整は, Ao-F群の28%に対し, Ax-F群は75%と有意に (p<0.01) 多かった. 術後の ankle pressure index (API) はAo-F群が93±17%と, Ax-F群の71±18%と比べて有意に (p<0.01) 高かった. Ax-F群では, 末梢同時再建例のAPIは89±13%と, 非再建例の70±19%と比べて高い傾向 (p<0.1) にあった. 術後の重篤な合併症は, Ax-F群の3例にみられ, うち2例が死亡した. 遠隔期開存率はAo-F群が100% (術後平均4年6か月), Ax-F群が85% (同3年8か月) であった. 再手術は4例に行い, 術後平均2年で全例開存していた. 腸骨動脈領域の閉塞症では, 大動脈-大腿動脈バイパスが第一選択となる. High risk 症例では, 手術の安全性を考慮した幅広い術式の選択が必要である.
  • 横山 斉, 佐藤 清春, 秋野 能久, 近江 三喜男
    1993 年 22 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    冠動脈バイパス (CABG) 術後の重症LOS症例に対しドパミン (DOP) およびドブタミン (DOB) の各20μg/kg/min以上の大量投与を行った. その症例の臨床的検討を行い, また副作用発生に関して小量投与群 (各5μg/kg/min以下) と比較検討した. 1986年から1991年までのCABG 116例中, 大量投与群は6例 (5.2%) でうち4例に長期生存を得た. 大量投与群と小量投与群の術後48時間以内の血行動態を比較すると, 大量群は有意に心拍数が多かったが, 平均120/分を越えなかった. 上室性および心室性不整脈の発生頻度に差はなかったが, リドカイン使用量は大量群が小量群の約2倍を要した. CPK-MB値の推移, 末梢血管抵抗値および時間尿量は両群に差はなかった. DOPおよびDOBを用いた大量カテコールアミン療法は, 発生する副作用に適切に対処すれば, CABG術後LOSに対し有用な治療法であると思われる.
  • 腹部大動脈・腸骨動脈閉塞症と大腿動脈・膝窩動脈閉塞症の比較
    林 載鳳, 浜中 喜晴, 末田 泰二郎, 松島 毅, 辻 勝三, 渡橋 和政, 呑村 孝之, 森田 悟, 香河 哲也, 松浦 雄一郎
    1993 年 22 巻 2 号 p. 83-85
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1987年から1992年までの5年間に広島大学第1外科でバイパス術を施行した閉塞性動脈硬化症症例を, 腹部大動脈, 腸骨動脈領域に病変を有するAIOD群51病変と大腿動脈, 膝窩動脈領域に病変を有するFPOD群46病変に分け, 両者の比較を行った. 年齢, 性別, 症状の軽重, 喫煙歴, コレステロール値, 中性脂肪値, 腎機能等の背景因子には有意差は認められなかったが, 末梢側病変の合併率はAIOD群24%, FPOD群57%でFPOD群のほうが高率であった. バイパス術後の5年累積開存率はAIOD群100%, FPOD群61%でAIOD群のほうが良好であった. AIOD群では末梢側病変の合併率の低さに加え, 全例末梢側病変の同時再建術が行われており, 末梢の run off の状態が手術成績に大きく関与するものと考えられた.
  • 工藤 樹彦, 川田 光三, 四津 良平, 古梶 清和, 井関 治和, 小野口 勝久, 川田 志明
    1993 年 22 巻 2 号 p. 86-91
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1986年1月から1991年12月までの6年間に当科で施行した真性大動脈瘤手術数は214例であり, うち15例 (7%) に重複大動脈瘤を認め, 9例に対し一期的手術を施行した. 補助手段は一時的バイパス4例, 遠心ポンプ4例, 部分体外循環1例で, 入院死および遠隔死を認めず経過は良好であった. 一過性の腎機能障害を一時的バイパス群に認め, 本症例の場合の補助手段としては, 至適灌流量が調節可能な遠心ポンプや部分体外循環が有効と考えられた. 一方, 二期的手術としての初回手術を6例に施行し, うち1例は二期的に他部位の手術を行った. 二期的手術としての初回手術を行い, 残存瘤を外来にて観察中の5例中1例に, 破裂によると思われる突然死を認めた. 重複大動脈瘤症例では全身的な血管病変の存在が予想されるが, risk factor や補助手段を考慮した上での一期的手術は十分可能であり, とくに胸部下行と胸腹部, 腹部などの合併の場合, 手術視野の点などからもほぼ安全に一期的手術が可能であり, 選択されうる術式と考えられる.
  • 近江 三喜男, 佐藤 香, 松木 克雄, 横山 斉, 三浦 誠, 佐藤 尚, 羽根田 潔, 毛利 平
    1993 年 22 巻 2 号 p. 92-96
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    教室で1983年以後の7年間に手術を施行した2歳未満の心室中隔欠損症43例を対象とし, 術前, 術中および術後の諸因子と術後呼吸管理の長期化の関連について検討した. 術後人工呼吸管理が3日以内の短期群30例と4日以上の長期群13例を比較すると, 術前因子では手術時月齢 (9.7か月, 6.5か月), 体重(6.3kg, 5.2kg), 術前からの人工呼吸使用の有無 (0/30例, 4/13例) で有意差を認めた. 術中因子では体外循環時間 (108分, 132分), 大動脈遮断時間 (56分, 70分) に, 術後因子では第1病日のRI (1.1, 1.7) に有意差を認めた. したがって, 本症の治療にあたっては, 重篤な呼吸不全に陥る以前のより早期の診断, 手術および確実かつ迅速な手術が治療の質の一層の向上と, それに伴う良好な術後経過をもたらすものと結論した.
  • 筒井 達夫, 海野 英哉, 厚美 直孝, 軸屋 智昭, 榊原 謙, 岡村 健二, 三井 利夫, 堀 原一
    1993 年 22 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    僧帽弁狭窄症における血栓形成要因を検討した. 左房内血栓群の左房径は平均値61.2mmであり, 非血栓群の46.4mmと比較し有意に大であった. また, 左房内血栓群と非血栓群とで, 術前の心拍出量を比較すると, それぞれ3.04l/min, 3.99l/minであり, 左房内血栓群の心拍出量は非形成群よりも有意に小さい傾向が認められた. 左房容積と心拍出量とから, 血流の左房平均通過時間 (MTTLA) を算出し比較した. その結果, 血栓形成群のMTTLAは6.2secであり, 非形成群の2.9secと比較して有意に延長しており, 左房内血流うっ滞の程度がより大きいと考えられた. したがって, 僧帽弁狭窄症においてMTTLAの延長は左房内血栓形成のリスクと考えられる.
  • 自己血返血システムの有用性について
    向原 伸彦, 小川 恭一, 麻田 達郎, 西脇 正美, 樋上 哲哉, 杉本 貴樹, 岡田 健次, 河村 剛史, 知花 幹雄
    1993 年 22 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    過去3年間に遠心パンプによる左心バイパスを補助手段として18例の胸部下行大動脈瘤患者に手術を行った. うち14例に術中大量出血時の急速輸血の目的で自家血返血システム (autotransfusion system) (ATS) を使用したが今回その利点および結果を検討した. ATSには体外循環の吸引回路を応用し, 2,000mlリザーバーと熱交換器を組み込んだが, この際ヘパリンを2mg/kg投与しACTを400秒以上に保った. 14例全例が生存した. ヘパリン大量投与による合併症として術中肺出血が3例にみられたが, これが原因で死亡した例はなかった. ATS使用例では瘤切開に伴う大量出血に際し血行動態は保たれ, バイパス中の体温は0.08±0.59℃上昇した. 遠心ポンプによる左心バイパスは胸部下行大動脈瘤手術の補助手段として有用であった. また, 自家血返血システムは術中大量出血への対応が容易で, 体温低下を防止できる利点があった.
  • 森田 一郎, 藤原 巍, 土光 荘六, 稲田 洋, 正木 久男, 三宅 隆, 勝村 達喜
    1993 年 22 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1991年12月までの過去18年間に教室で10例の大動脈弓分枝動脈瘤に対して外科的治療を行った. 年齢は17~82歳 (平均55歳) 男性8例, 女性2例であった. 成因は, 動脈硬化5例, 胸郭出口症候群2例, 炎症性 (ベーチェット病) 1例, 外傷1例, 医原性1例と多彩であった. 主訴は, 頸部や鎖骨上窩の腫瘤が大部分で, その他には胸部異常陰影や胸痛なども認めた. 破裂2例 (1例は腕頭動脈瘤, 1例は鎖骨下動脈瘤), 上肢急性動脈閉塞症1例も認めた. 病変部位は, 鎖骨下動脈5例, 内頸動脈2例, 総頸動脈1例, 外頸動脈1例, 腕頭動脈1例であった. 術式は, 瘤切除+血行再建術を原則として行い, 現在までのところ, 腕頭動脈瘤破裂の出血死と炎症性内頸動脈瘤のグラフト閉塞以外の経過は良好である. 本症はかなり頻度の少ない疾患ではあるが, 破裂や血栓閉塞・塞栓などを合併することもあり可及的すみやかに手術することが望ましい.
  • 村田 升, 久米 誠人, 小林 聰, 森保 幸治, 横川 秀男, 山田 眞, 舟波 誠, 高場 利博, 古川 俊隆
    1993 年 22 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    人工弁置換術が施行された外来通院中の患者26名のうちで, 抗凝固療法のみ施行されていた患者14名と, Aspirin を併用投与されていた患者12名それぞれに Trapidil 300mg/dayを投与し, 投与後1, 3, 6か月後に血小板凝集能と Thromboxane B2 (TXB2), 6-keto-PGF1αを測定した. その結果, Trapidil投与後はいずれの群でも血小板凝集能は低下し, 血清TXB2値, TXB2/6-keto-PGF1α比は共に投与開始後6か月後有意に低下した. 血小板凝集促進作用を持つTXA2の代謝産物であるTXB2と, 血小板凝集抑制作用を持つPGI2の代謝産物である6-keto-PGF1αがこのような変動を示すのは Trapidil の血小板凝集抑制効果を表すと思われた. また Aspirin 併用群では血小板凝集能, TXB2が非併用群よりも有意に低下した. Trapidil は抗血小板療法として有用であり, Aspirin, Trapidil 併用はより効果的な抗血小板療法と思われた.
  • 井畔 能文, 豊平 均, 下川 新二, 梅林 雄介, 福田 茂, 森山 由紀則, 渡辺 俊一, 平 明
    1993 年 22 巻 2 号 p. 118-122
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    開心術後, 低心拍出量症候群の症例に対し低体温を導入して, 低体温導入前後での循環動態, 酸塩基平衡, 混合静脈血酸素飽和度 (SVO2), 酸素消費量 (VO2) について比較し, 低体温管理の有用性について検討した. 症例は不安定狭心症2例, MVR後左室破裂2例, AMIに伴うMR 1例, 高度左室機能低下のAR 1例であった. 低体温管理はSVO2 50%を目標としてブランケットおよび氷枕による冷罨法を用いた表面冷却で行い, 体温は血液温33~35℃平均34.1±0.3℃であった. 低体温時間は平均78時間で不整脈は認めていない. 低体温前後の脈拍数, 平均血圧, 心拍数, 末梢血管抵抗, 肺動脈楔入圧および酸塩基平衡に有意な変化はなかった. SVO2は47.8±7.5から58.7±7.9%に有意に改善し, VO2も231±29.7から188±31.3ml O2/min に有意に減少していた. また低体温管理中の尿量は増加傾向にあった. 全例低体温期間中に心機能は改善し, IABPから離脱した. 開心術後循環危機にある症例にたいする低体温管理は特殊な設備を要せず, 臓器の酸素負債を軽減することで有用な術後管理上の手段と考える.
  • 西本 孝, 福本 仁志, 辻井 英治, 衣笠 誠二
    1993 年 22 巻 2 号 p. 123-126
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大動脈縮窄症に併発した比較的まれな胸部下行大動脈瘤の破裂例に対し, 経皮的部分体外循環 (PCPS: percutaneous cardio pulmonary support system) を用いて, 人工血管置換術を施行した. 症例は22歳男性, 3年前から胸部下行大動脈瘤を指摘されていたが無症状のため放置. 今回, 胸痛が出現し紹介来院した. 上下肢収縮期血圧差は70mmHg, 大動脈造影などから定型的大動脈縮窄症に併発した胸部下行大動脈瘤と診断した. 発症5日後の胸部レントゲン写真にて多量の左胸水出現, 瘤破裂の診断で緊急手術を施行した. 手術にはPCPSを使用したが, 操作が簡便で血行動態も安定しており, ヘパリンの使用量や出血量も少なく有用であった. 瘤内面は, 大動脈峡部からの血流ジェットが当たる部位に一致して, 長軸方向に4cmの亀裂を認めた. 内膜および中膜は断裂しており, 中膜と外膜の間に血腫が存在した. Open rupture を外膜のみで免れた sealed rupture であった.
  • 鎌田 典彦, 佐藤 達朗, 山田 知行, 青嶋 實
    1993 年 22 巻 2 号 p. 127-130
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は右外腸骨動脈閉塞で腹部-右大腿動脈人工血管バイパス術後, 右鼠径部に膿瘍を伴う人工血管感染を生じた76歳男性. Extra-anatomical bypass として閉鎖孔ルートによる腹部-大腿動脈人工血管バイパスを作製, 感染部人工血管切除を施行した.
  • 高沢 有史, 土田 弘毅, 橋本 明政
    1993 年 22 巻 2 号 p. 131-134
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性で上行, 弓部, 胸部下行大動脈がすべて拡大した Stanford A型慢性解離性大動瘤脈に対し, 逆行性脳灌流法を用い胸部下行大動脈近位部まで含めた Cooley's hemiarch repair 術式を行い同時に胸部下行大動脈解離腔への tear を閉鎖した. 術後経過は良好で胸部下行大動脈解離腔に広汎な血栓形成がみられ一時的にDICを呈したが改善し胸部下行大動脈以下の手術適応は現在のところないと思われる. 広範囲A型胸部解離性大動脈瘤に対する外科治療は staged operation が一般的であるが今回胸骨正中切開のみで Cooley's hemiarch repair 術式という比較的小さい侵襲で臨床的に根治性が高い術式を行いえたので報告した.
  • 黒田 弘明, 井上 明彦, 竹本 直明, 石黒 真吾, 佐々木 成一郎, 森 透
    1993 年 22 巻 2 号 p. 135-137
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    開心術中の心筋保護液投与法の一つとして冠静脈洞からの逆行性投与法が広く行われるようになってきた. われわれの経験した症例では大動脈弁置換術に際し, 合併奇形の左上大静脈遺残 (PLSVC) のためこの逆行性投与が困難であった. 圧モニターから異常が発見されただちに順行性投与法に変更することにより対処できたが, PLSVCは体外循環のみでなく, 逆行性心筋保護法に際しても常に念頭に置くべき奇形と考えられた.
  • 芳村 直樹, 岡田 昌義, 山下 長司郎, 太田 稔明, 安宅 啓二, 中桐 啓太郎
    1993 年 22 巻 2 号 p. 138-141
    発行日: 1993/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性で主訴は腹部拍動性腫瘤である. 1989年2月, DeBakey IIIa型解離性大動脈瘤が発生した際, 真性腹部大動脈瘤の併存が発見された. 1990年3月, 血尿を主訴とするDICが発症したが, 内科的治療にて症状は軽快した. その後, 1991年から1992年にかけて腹部大動脈瘤の拡大傾向を認めたため, 手術目的にて当科入院となった. 術前検査所見では血小板数10.7×104/mm3, APTT 35.4秒,PT 12.5 (11.2) 秒, トロンボテスト64%, フィブリノーゲン152mg/dl, FDP 118.7μg/ml, アンチトロンビン (AT) III 90%であった. 動脈瘤は最大径8cmで, 腎動脈下で著しく前方に突出し, 蛇行していた. Y型人工血管を用いて腹部大動脈を置換したが, 術中とくに出血傾向はみられなかった. 術後は血小板数23.1×104/mm3, フィブリノーゲン451mg/dl, FDP 47.7μg/ml, AT III>100%と, それぞれ検査所見の改善を認め, 術後32日目に軽快退院した.
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