抄録
1979年から1992年6月までに成人心房中隔欠損症183例を経験した. 男女比は62対121, 年齢は20歳から70歳平均42.2歳であった。これを10歳ごとのグループに分け病態の変化を検討した. 肺対体血流量比, 肺対血管抵抗比は年代間に差はみられなかったが, 肺対体血圧比, 心房細動の発現率, 三尖弁逆流 (TR) の合併率, 心胸郭比, 自覚症状を有する率はいずれも加齢とともに上昇しASDの病態が進行性であることを示唆した. TRに対する三尖弁輪形成術の有効性は高く積極的に行う方針である. 僧帽弁逆流に対しては術前のUCG所見を参考にするとともに, 術中経食道心エコー, 直視下観察, 逆流テストを行い弁形成術の適応を決定する. ASDの病態が進行性であり40歳以降は明らかに重症化することから, これ以前に手術することが望ましい.