1994 年 23 巻 2 号 p. 125-128
動静脈奇形 (AVM) は四肢や脳, 肺などに発症することが多く骨盤内のものは少ない. 今回われわれは, そのような骨盤内AVMの一例に対して根治せしめたので報告する. 症例は59歳女性で, 主訴は右下腹部腫瘤である. 骨盤部CTと血管造影で異常血管瘤を伴うAVMと診断した. 手術は術前より診断しえた feeding artery である右内腸骨動脈と右腰動脈および右尿管動脈を結紮し, 右腎動脈からのAVMと瘤を摘出した. 術後の血管造影では, 右内腸骨動脈末梢の正常血管は左側からの側副血行路により造影されたが, AVMは完全に消失していた. 近年AVMに対する治療法としてカテーテルによる塞栓術が頻用されているが, 本症例のように流出系に異常血管瘤を伴う場合には, 塞栓術は危険を伴い, 不確実である. このような症例には feeding artery を結紮し瘤を切除することが, より確実で安全であり, 今回のような外科的摘出術が第一選択になると思われる.