1994 年 23 巻 4 号 p. 261-265
巨大な球状血栓を伴った特発性右房拡張症に対する1手術例を経験した. 症例は28歳, 女性. 8年前より心拡大を指摘されていたが, 自覚症状はなかった. 肺炎で近医入院中に施行された心エコー検査で異常を指摘, 当科に紹介された. 胸部X線では右第II弓は突出し, 心エコー検査では房室弁に逆流はなく, 右房の著明な拡張とその内部に高音響性腫瘤を認めた. 手術所見では右房は拡張し, その壁はきわめて薄く, 右房内腫瘤は器質化血栓であった. 血栓摘出術とともに右房縫縮術を行った. 特発性右房拡張症はきわめてまれな疾患であり, 従来その予後は良好であるとされていた. しかし心不全や不整脈を呈して予後不良の症例の報告もあり, また手術による危険性は低いことから, 有症状例や本症例のような合併症を伴う症例には積極的に手術を行うべきであると考える.