抄録
9年前他院にて僧帽弁置換術を施行された47歳男性が1992年12月2日早朝, 突然, 呼吸困難をきたし当院に救急搬送された. 来院時, 意識混濁・血圧60/40mmHg・呼吸困難が強く, 酸素化不良のため気管内挿管し調節呼吸を開始した. 胸部X線透視にて人工弁 disc の運動が見られず, disc の逸脱による急性左心不全と診断した. 緊急再弁置換術の適応と判断し, 直ちに右鼠径部大腿動静脈を用いて経皮的心肺補助 (PCPS) を行いつつ手術室に移送した. PCPS作動下 (2.2~2.7l/min) に執刀, 通常の人工心肺に移った. 左房は著明に拡大あるも血栓なく, disc は術直前に胸部下行大動脈にあると判明していたが, 術中には摘出せず, B-S弁を摘出して Carbomedics 弁29mmにて置換した. 1か月後腹部大動脈内の disc および右大腿動脈内の strut を摘出し, 軽快退院した.