日本心臓血管外科学会雑誌
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24 巻, 1 号
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  • 黒田 弘明, 本多 祐, 芦田 泰之, 原 陽一, 石黒 真吾, 森 透
    1995 年 24 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1980年1月から1993年9月までの約14年間に当科にて経験した83例の大動脈解離症例のうち, 7例 (8.4%) に動脈硬化性の真性大動脈瘤を合併あるいはその既往 (術後) を有していた. 5例が同時に真性大動脈瘤を合併し, 2例は腹部大動脈瘤の術後であった. 解離部位は DeBakey III型50例中4例 (8.0%) に対しI~II型33例中3例 (9.1%) と解離の部位に偏りはなかったが, 真性瘤の部位としては腹部のものが7例中5例と多く, 他に上行1例, 上行弓部1例であった. 腹部大動脈瘤術後の2例は解離発症急性期にともに破裂し, かかる症例での注意が必要と考えられた. 両病変を合併する症例の外科治療にあたっては, おのおのの病変の部位と程度を十分に検討することが重要であるが, とくに両者が隣接あるいは同一部位に発生した症例では外科治療が複雑となると考えられる.
  • 志田 力, 井上 享三, 脇田 昇, 山本 信一郎
    1995 年 24 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Blue toe syndrome は突然下肢の趾先のチアノーゼ, 疼痛をきたす疾患であり, 主として腹部大動脈・腸骨動脈等からのコレステロール等による微細塞栓 (microatheroembolism) により起こるといわれている. 当科で経験した blue toe syndrome は10例 (15肢) であり, 平均年齢は73歳であった. 本症診断に腹部大動脈の造影CTは, 腹部大動脈・腸骨動脈の内・外径, 動脈壁の石灰化などの性状および壁在血栓の有無がわかり有用であった. 手術は3例に, すなわち腹部大動脈瘤の置換を2例に, 腹部大動脈の置換を1例に行った. 一方2例が blue toe syndrome 発症後1~2か月のあいだに急激に腎機能が悪化し, 合併症のため死亡した. Blue toe syndrome は足趾に対する予後に注目されてきたが, 本態は微細塞栓症であり, 生命にたいする予後が悪い例も含まれることに注意すべきと考える.
  • 上平 聡, 本多 祐, 金岡 保, 原 陽一, 石黒 真吾, 黒田 弘明, 応儀 成二, 森 透
    1995 年 24 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    成人開心術17症例を術前正常群 (10例) と脳血管障害群 (7例) に分類し, 経頭蓋ドプラ血流計を用いて体外循環中の CO2 reactivity の維持に関して比較した. 全例一定体灌流量の定常流, 中等度低体温体外循環下で, α-stat strategy で導入維持された後, high PaCO2 state と low PaCO2 state を設定し, 両群において脳血流変化および脳酸素消費量の変動を検討した. その結果PaCO2の上昇に従い両群とも脳血流変化は, 有意な増加を認め, CO2負荷に対しての脳血管反応性は維持されていた. しかし脳酸素消費は, 正常群では両 PaCO2 state 間で有意な変動はないが, 脳血管障害群ではCO2負荷時には脳血流の増加に対し逆に脳酸素消費の抑制が認められた. この原因として動脈硬化の強い領域と正常領域の血管反応性の相違が, 脳組織血流の不均等性を増幅するためではないかと推測された.
  • 荻原 正規
    1995 年 24 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞後の左室自由壁破裂に対する迅速な破裂部修復法の開発を目的に, 雑種成犬を用いた左室自由壁破裂 (LVR) モデルの作成およびフィブリン糊充填による破裂部修復法の実験的検討を行った. <方法>1. LVRモデル (n=12): 左室前壁に虚血状態を作成し破裂孔を作った. 破裂部は加熱電対を装着した把持糸により修復, 直流通電により破裂せしめた. 2. フィブリン糊注入群 (n=6): LVRモデルを用い, 破裂20分後に経心膜的に心嚢内出血を排液しフィブリン糊充填による止血を試みた. <結果および考察>1. LVRモデル: 直流通電を電対に行い把持糸は切断, 平均30±13分にて全例が死亡. 剖検にて心嚢内出血と破裂孔開存を確認, 左室自由壁破裂状態は随時作成可能であった.2.4頭 (67%) でフィブリン糊注入後60分まで循環動態は維持され, フィブリン糊充填による破裂部の非手術的修復が可能であった.
  • 術後持続血液濾過の有用性について
    牧野 茂行, 平岩 卓根, 木下 肇彦, 藤井 英樹
    1995 年 24 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    慢性血液透析患者に対する冠状動脈バイパス手術を7例経験した. 術中は, 人工心肺回路に血液透析と限外濾過を併用し, ICU帰室直後から持続血液濾過による除水とグルコース・インシュリン療法によって水分バランスと血清カリウムを適正に保つように管理した. 術後血液透析は, 術後2日目以降で再開可能であった. 7例全例で術後合併症もなく元気に退院し, 術後3か月~3年 (平均20か月)の経過観察で慢性期死亡・狭心症状再発ともに1例も認めていない. 慢性透析患者に対する冠状動脈バイパス手術におけるわれわれの周術期管理法は非常に有用であった. 慢性透析症例においても, 通常と同じ手術適応で冠状動脈バイパス手術が施行可能であると考える.
  • 浦山 博, 川上 健吾, 笠島 史成, 川瀬 裕志, 原田 猛, 松本 康, 竹村 博文, 榊原 直樹, 川筋 道雄, 渡辺 洋宇
    1995 年 24 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞は腹部大動脈瘤の術中術後の合併症で最も重篤なものの一つである. ジピリダモール負荷心筋スキャン, 冠状動脈造影により評価を行い, 必要な症例には冠状動脈再建を行う方針を開始した1983年以降と, それ以前の腹部大動脈瘤の待機手術例を比較検討した. 1982年までの前半の10年間の症例は25例で術前併存症としての虚血性心疾患を1例に認めた. 1983年以降の後半の10年間の症例は85例で, 術前併存症としての虚血性心疾患を14例に認め, 全例冠状動脈造影にて評価した. 後半において高血圧や高脂血症などの危険因子もしくは心電図異常を認める32例にジピリグモール負荷心筋スキャン等を施行し, うち8例に冠状動脈造影を施行した. 前半の25例において術後心筋梗塞を2例に認め, うち1例が死亡した. 後半の85例中5例に冠状動脈バイパスを施行した. 後半の85例において術後心筋梗塞は認めなかった. 腹部大動脈瘤手術では積極的な虚血性心疾患対策が必要である.
  • 堺 正仁, 財部 京実, 樗木 等
    1995 年 24 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は64歳男性で腹痛, ショックを主訴に, 当科に紹介となり腹部エコー, CTの結果, 腹部大動脈瘤破裂と診断され緊急手術となった. Y型人工血管を用いて腹部大動脈を置換したが第2病日よりCPK 18,000IU/l, GOT 1,500IU/lと上昇し, ミオグロビン尿を呈し, 無尿となった. 横紋筋融解症と診断し, 直ちにプラズマフェレーシスを施行し, 循環動態が不安定なため, 急性腎不全に対して, 持続血液濾過透析 (CHDF) を施行した. その後, 通常の血液透析に移行し第25病日目に利尿期となり, 全身状態も改善し, 救命することができた.
  • 鈴木 政夫, 川辺 昌道, 津田 京一郎, 石川 進, 長谷川 豊, 森下 靖雄
    1995 年 24 巻 1 号 p. 40-43
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    深部静脈血栓症で発症した弧立性内腸骨動脈瘤の1手術例を経験した. 症例は左下肢の腫脹と疼痛を主訴とした83歳女性で, 弧立性の左内腸骨動脈瘤に対し, 動脈瘤中枢側を縫合閉鎖し, 左総腸骨動脈-外腸骨動脈間バイパス術を行った. 動脈瘤は外腸骨動脈背側を通って外側へと成長しており, 瘤による腸骨静脈圧迫が血栓症の原因と考えられた. 弧立性内腸骨動脈瘤の本邦報告40例中, 深部静脈血栓症を伴った症例は自験例のみであったことから報告した.
  • 石原 浩, 酒井 浩
    1995 年 24 巻 1 号 p. 44-47
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    9年前他院にて僧帽弁置換術を施行された47歳男性が1992年12月2日早朝, 突然, 呼吸困難をきたし当院に救急搬送された. 来院時, 意識混濁・血圧60/40mmHg・呼吸困難が強く, 酸素化不良のため気管内挿管し調節呼吸を開始した. 胸部X線透視にて人工弁 disc の運動が見られず, disc の逸脱による急性左心不全と診断した. 緊急再弁置換術の適応と判断し, 直ちに右鼠径部大腿動静脈を用いて経皮的心肺補助 (PCPS) を行いつつ手術室に移送した. PCPS作動下 (2.2~2.7l/min) に執刀, 通常の人工心肺に移った. 左房は著明に拡大あるも血栓なく, disc は術直前に胸部下行大動脈にあると判明していたが, 術中には摘出せず, B-S弁を摘出して Carbomedics 弁29mmにて置換した. 1か月後腹部大動脈内の disc および右大腿動脈内の strut を摘出し, 軽快退院した.
  • 向原 伸彦, 小川 恭一, 麻田 達郎, 樋上 哲哉, 大保 英文, 杉本 貴樹, 河村 剛史
    1995 年 24 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の男性で, Leriche 症候群に対し Cooley double velour knitted Dacron を用いた右腋窩-両側大腿動脈バイパスが施行された. 10年10か月後にグラフト瘤を指摘され今回入院したが, 手術待機中に両下肢急性動脈閉塞をきたし緊急手術を行った. 両側深大腿動脈の塞栓摘除術に引き続き, 直径8mmの ringed PTFE による左腋窩-両大腿動脈バイパス, 右大腿動脈-膝窩動脈 in situ saphenous vein bypass および右腋窩動脈パッチ形成術を行った. 術後経過は良好であった. 1981年6月以前に製造された Cooley double velour knitted Dacron には, 遠隔期にグラフト瘤をきたす例があり, 注意深い長期の follow-up が必要と思われる.
  • 鎌田 誠, 阿部 忠昭, 栗林 良正, 関根 智之, 相田 弘秋, 関 啓二, 目黒 昌, 柴田 芳樹, 飯島 啓太郎, 近藤 克幸
    1995 年 24 巻 1 号 p. 53-55
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は63歳女性, 発熱と腰痛・腹痛を主訴とし, CT・DSAにて腹部大動脈瘤終末部直上に, 短期間で増大傾向を示す嚢状の動脈瘤を認めたため, 切迫破裂症例と診断し, 緊急手術 (腹部大動脈Y型人工血管置換術) を施行した. 摘出標本の病理組織検査で, 大動脈の外側に広範な膿瘍形成を認め, 感染性腹部大動脈瘤と診断された. 本症例をもとに感染性腹部大動脈瘤の診断, 治療について考察を加えた.
  • 大内 浩, 福田 幾夫, 中村 勝利, 松崎 寛二
    1995 年 24 巻 1 号 p. 56-58
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤の稀な合併症である腹部大動脈-下大静脈瘻の1例を経験した. 症例は, 75歳, 男性でうっ血性心不全, 急性肝腎障害および下血で発症した. 右下腹部に thill を伴う拍動性腫瘤を触知し, 超音波カラードプラー上, 腹部大動脈-下大静脈瘻が認められた. 手術は緊急にて, 腹部大動脈-両側総腸骨動脈人工血管置換術および瘻孔部位の下大静脈のパッチ再建術を施行し, 術後, 各症状は速やかに改善した.
  • 白 鴻志, 中埜 粛, 白倉 良太, 松若 良介, 西村 元延, 雨宮 彰, 松田 暉
    1995 年 24 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    DeBakey I 型動脈解離に対し primary repair 法を4例に行い, その残存解離腔の血栓化状態から治療効果を評価し検討した. 術後3例において残存解離腔の良好な血栓閉塞化を認めたが, Marfan 症候群の不全型と考えられた1例では血栓化の進行を認めなかった. この点は本術式の適応を考える上で重要と考える.
  • 宮城 和史, 古謝 景春, 国吉 幸男, 伊波 潔, 赤崎 満, 下地 光好, 久貝 忠男, 鎌田 義彦, 城間 寛, 草場 昭
    1995 年 24 巻 1 号 p. 64-67
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    冠動静脈瘻の中枢側の動脈は, 瘤状に拡大し破裂予防のため手術が行われることがあるが, その破裂例の報告は少ない. 今回, 冠動静脈瘻破裂により心タンポナーデをきたした症例に対し, 緊急手術を施行し救命しえた一例を経験したので報告する. 瘤状拡大を示す冠動静脈瘻は, 破裂の予防のためにも積極的に手術をすすめるべきである.
  • 山崎 一也, 相馬 民太郎, 市川 由紀夫, 岩井 芳弘, 近藤 治郎, 松本 昭彦
    1995 年 24 巻 1 号 p. 68-70
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は23歳の男性. 主訴は胸痛で, 肺塞栓症を併発していた. 心臓超音波検査で右房内に Chiari network を認めたが他に肺塞栓症の原因となるような病変は存在しなかった. 抗凝固療法を施行したが, 肺塞栓を繰り返し発生した. Chiari network 上に血栓が形成され, これが肺塞栓を反復的に引き起こしたものと考え, Chiari network 切除術を行ったところ, 症状の軽快をみた.
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