抄録
Blue toe syndrome は突然下肢の趾先のチアノーゼ, 疼痛をきたす疾患であり, 主として腹部大動脈・腸骨動脈等からのコレステロール等による微細塞栓 (microatheroembolism) により起こるといわれている. 当科で経験した blue toe syndrome は10例 (15肢) であり, 平均年齢は73歳であった. 本症診断に腹部大動脈の造影CTは, 腹部大動脈・腸骨動脈の内・外径, 動脈壁の石灰化などの性状および壁在血栓の有無がわかり有用であった. 手術は3例に, すなわち腹部大動脈瘤の置換を2例に, 腹部大動脈の置換を1例に行った. 一方2例が blue toe syndrome 発症後1~2か月のあいだに急激に腎機能が悪化し, 合併症のため死亡した. Blue toe syndrome は足趾に対する予後に注目されてきたが, 本態は微細塞栓症であり, 生命にたいする予後が悪い例も含まれることに注意すべきと考える.