日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
馬蹄腎を合併した腹部大動脈瘤の1例
蜂谷 貴金子 寛三岡 博中村 達馬塲 正三
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 24 巻 5 号 p. 333-336

詳細
抄録

67歳の男性, 総胆管結石の治療中にCTで腹部大動脈瘤を指摘された. 瘤の最大径は60mmで, 瘤前面を横切る馬蹄腎峡部を観察した. 血管造影, Helical CTなどで左右2本計4本の腎動脈を認め, うち2本は瘤より分岐していた. 開腹すると, 左総腸骨動脈から腎峡部に向かう5本目の腎動脈を確認した. 腎峡部の瘤からの剥離は容易で, 峡部を温存し, 大動脈両側総腸骨動脈間をY字型人工血管で置換した. 瘤より分岐した左腎動脈は6mm knitted Dacron を用い再建した. 同じく瘤より分岐した右腎動脈は峡部下面にあり結紮した. 術後は腎機能障害なく, 再建した腎動脈の開存も確認された. 本邦での報告例は自験例を含めて11例で, 5例で腎動脈再建がなされ8例で腎峡部が温存された. 術前に正確な腎動脈分岐診断がなされたものは3例にすぎず, 正確な診断とそれに伴う積極的な腎動脈再建が重要と思われた.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top