日本心臓血管外科学会雑誌
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24 巻, 5 号
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  • 不破 誠行, 広瀬 一, 橋本 昌紀, 岩田 尚, 久保 清景, 石川 真, 荒川 博徳, 東 健一郎, 松本 興治
    1995 年 24 巻 5 号 p. 281-285
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    過去3年間に当教室において胸部下行大動脈人工血管置換術を施行した DeBakey IIIb型解離性大動脈瘤症例のうち, 腹部大動脈の拡大がなく, 腎動脈が偽腔より灌流されている例や真腔狭小例で, 末梢側真腔吻合では臓器虚血の可能性が強いと考えられた4症例に対し末梢側両腔吻合法を行った. 同時期に経過観察しえた偽腔灌流など認めず末梢側を真腔のみに吻合した4例をコントロール群として, 主に術後遠隔期の腹部残存偽腔の消長につき検討した. 対象群4例では術後平均17か月の観察期間で, 腹腔動脈レベルでの腹部大動脈最大径は軽度拡大が2例, 軽度縮小が2例であり, 腹部偽腔断面積は4例とも縮小していた. 術後第30病日での腎機能も術前に比し低下した症例はなかった. 本術式は偽腔灌流などを有する広範解離例に対して, 腹部重要臓器血流保持の観点から有用な術式であり, また腹部残存偽腔の拡大も認められなかった.
  • 上縦隔留置ポータブル持続吸引器の効果について
    田ノ上 禎久, 松井 完治, 倉員 敏明, 安垣 享, 松崎 浩史, 河野 博之, 真弓 久則
    1995 年 24 巻 5 号 p. 286-289
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    冠動脈バイパス術後の縦隔血腫の発生防止を目的として, 上縦隔にポータブル持続吸引器を留置し, その効果を判定した. 連続179例の冠動脈バイパス術症例を対象とし, 通常の下部縦隔ドレーンのみのI群97例と, 下部縦隔ドレーンに加え上縦隔にポータブル持続吸引器を留置したII群82例について以下の検討を行った. 総ドレーン出血量は有意差は認めないもののII群がI群より高値を示した. 縦隔胸郭比 (対術前値) は術後1日目I群134±22%, II群123±15%, 術後7日目I群133±20%, II群122±14%といずれもII群はI群より明らかな低値を示した (p<0.001). 術後合併症としてI群に縦隔洞炎2例, 心タンポナーデ5例を認めたが, II群にはこれら合併症の発生は認めず, 合併症発生率には両群間に有意差を認めた (p<0.02). 以上より, 本吸引器の縦隔血腫減少効果は明らかであり, 縦隔洞炎・心タンポナーデの発生防止にも有用であることが示唆された.
  • 蜂谷 貴, 阪口 周吉, 金子 寛, 小谷野 憲一, 馬場 正三
    1995 年 24 巻 5 号 p. 290-298
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    間歇性跛行に対する治療法選択を模索するため各種治療法の遠隔予後を検討した. 間歇性跛行を主訴とする閉塞性動脈硬化症 (ASO) 219例を血行再建群170例と保存療法群49例に分け, 経過中に間歇性跛行を呈したバージャー病 (TAO) 55例を血行再建群17例, 腰交切群15例, 保存療法群23例に分けた. 両疾患の背景因子, 跛行症状と治療後の変化, QOLの改善度および生命予後を比較した. その結果ASO患者では跛行症状の改善率は血行再建群が有意に良好で (p<0.001) これに相関してQOLおよび生命予後も向上した (p<0.01). 一方TAO患者の跛行改善率は3群間でほぼ同等であった. これらは両疾患の背景因子の差から起こるものと考えられ, 今後は両疾患を分けて間歇性跛行の治療方針を論議し決定する必要がある. ASOでは血行再建術を第一選択とし, TAOでは保存療法を行い無効例に手術療法を選択するのがよい.
  • 井上 仁人, 上田 敏彦, Yasunori Chou, 大迫 茂登彦, 三丸 敦洋, 小田口 浩, 森 厚夫, 志水 秀行, 四津 良平, ...
    1995 年 24 巻 5 号 p. 299-304
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    当院において1993年7月までの過去10年間に経験した腹部大動脈瘤症例232例中, 炎症性腹部大動脈瘤症例は5例 (2.2%) であり, その診断, 治療に関して検討し, 文献的考察を加えた. 自験例5例中3例は, 腹痛・腰痛などの自覚症状を有し, 2例では切迫破裂との鑑別診断が問題となった. また, 血液検査上血沈およびCRPの亢進をきたし, 全例に開腹所見および病理組織所見上炎症性変化を認めた. 画像診断においては, X線CT, 腹部超音波検査およびMRIにて特徴的な所見がみられ, とくにCT像にてマントル状に肥厚した瘤壁を3例に認め, 診断上有用であった. 治療は, 瘤切除を行わずに全例に graft inclusion technique にてY型人工血管置換術を施行した. 術後CTによる瘤壁厚の経時的変化を観察しえた2例では, 抗炎症剤を使用せずにその経時的減少を認めた.
  • 井上 恒一, 本田 完, 花房 雄治, 安藤 進, 小沢 敦, 関口 茂明, 野元 成郎, 門倉 光隆, 山田 眞, 高場 利博
    1995 年 24 巻 5 号 p. 305-310
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心臓手術における心筋局所冷却法は有効な心筋保護法であるが心嚢に氷水を満たすことによる横隔神経障害, 冠動脈スパズムによる心筋保護液の不均等供給などの問題も存在する. これらの冷却障害を回避するため心筋冷却を軽度とし, 増大する心筋酸素需要に対する酸素供給を目的として, 優れた酸素運搬能を持つ Perfluorochemicals (PFC) に心臓を浸漬し, 有効性を検討した. ラット摘出心 (心筋温20℃) での冠灌流遮断実験では, 遮断中PFCに浸漬しなかった群の心拍動持続時間は10±2分であったが, PFC浸漬群は20±4分であった. 心筋温30℃で cardioplegia による急速心停止を得た実験において, PFCに浸漬した群は非浸漬群および生食水浸漬群より再灌流後の心機能の回復は良好であった. 軽度心筋冷却 (30℃) 虚血下においてPFCに心臓を浸漬した場合, 冠循環を介さず心筋に酸素を供給し心筋保護効果を示したと考えられた.
  • 福村 好晃, 堀 隆樹, 北川 哲也, 加藤 逸夫, 黒上 和義
    1995 年 24 巻 5 号 p. 311-315
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    過去18年間に13例の高位腹部大動脈閉塞症に対して血行再建術を施行した. 手術は解剖学的血行再建術を原則とし, 血栓内膜摘除術を2例, 腹部大動脈-両腸骨動脈 (大腿動脈) バイパス術を9例, 血栓除去兼人工血管置換術および両側腋窩-大腿動脈バイパス術を各1例行った. 大腿動脈以下末梢動脈血流の評価を行い, 病変合併例に対しては可能な限り一期的に再建を行った. 術後早期死亡が2例 (劇症肝炎1例, 脳梗塞1例), 遠隔期死亡が4例 (虚血性心疾患2例, 脳出血1例, 悪性腫瘍1例) であった. 人工血管および血栓内膜摘除を施行した自己血管の長期開存率は, 1例が術後13年目に閉塞したのみで, 良好であった. また遠隔期の症状も2例に軽度の間欠性跛行を認めるのみであった. 高位腹部大動脈閉塞症に対する血行再建術の成績は, 長期にわたり良好である. しかし, 遠隔期死亡の原因として虚血性心疾患や脳血管障害が多く, 注意深い経過観察が必要である.
  • 堺 正仁, 樗木 等, 坂口 昌之, 大西 裕幸
    1995 年 24 巻 5 号 p. 316-319
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    最近の血液浄化法の進歩により, 以前は循環動態が不安定で施行が困難であった, 循環器領域の疾患にも血液浄化が安全に施行できるようになった. 今回急性の循環不全を呈し, 急性腎不全に陥った8例の症例に持続血液濾過透析 (CHDF) を導入し, 5例が急性腎不全より離脱が可能であった. CHDF施行中, 血清BUN, Cr, Kは低値におさえられた. また, 8例の急性循環不全中, 4例に経皮的心肺補助装置 (PCPS) を装着し, 全例がPCPSより, 離脱が可能であった. 死因は多臓器不全によるもので腎不全に起因するものはなかった. このように, 急性循環不全および腎不全の治療は体外循環法の進歩により向上してきている.
  • 夏秋 正文, 伊藤 翼, 富田 伸司, 吉戒 勝, 古川 浩二郎, 力武 一久, 中山 義博, 須田 久雄
    1995 年 24 巻 5 号 p. 320-325
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    僧帽弁疾患に対する人工弁置換手術 (MVR) 前後の左室局所壁運動を, 僧帽弁閉鎖不全症 (MR) では両尖腱索温存術式によるMVR (Group I) の12例と後尖腱索温存術式によるMVR (Group II)の9例において検討した. 僧帽狭窄症では後尖腱索温存術式の12例を検討した (MS-Group). 術後左室局所壁運動はセンターライン法を用いて, 左室の5領域について shortening fraction (SF) を検討した. 僧帽弁閉鎖不全症では, 術前に対する術後のSFの比率 (%SF) は, Group I群において Group II群より前側壁, 心尖部において有意の改善を認めた (心尖部の%SF: Group I 162±79, Group II 61±17%, p<0.001). 術前に対する術後の左室駆出率 (%EF) を比較すると, Group I群においてII群より良好であった. すなわちMRでは両尖腱索温存術式が心機能上有効であった. MS-Group では弁下病変の強い例では術前の後心基部 (PB) の壁運動は低下しており, 術後も同領域は低下したままであった. MSに対する後尖腱索温存術式の術後局所壁運動は, 術前の弁下病変の所在により影響を受け, 弁下病変の少ない前側壁, 心尖部, 横隔膜面では良好であった.
  • 小林 俊也, 幕内 晴朗, 成瀬 好洋, 後藤 昌弘, 山本 平, 野中 健史, 渡辺 泰徳, 布施 勝生
    1995 年 24 巻 5 号 p. 326-329
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    70歳以上の高齢者に対するエリスロポエチン (rHuEPO) 投与効果に関し検討した. 1989年5月から1992年12月までに行った冠状動脈バイパス術症例379例のうち, 70歳以上でrHuEPOの投与を行った32例を1群, 同じく70歳以上でrHuEPO非投与の35例をII群, また, 60歳以下の若年者でrHuEPOを投与した66例をIII群とした. 各群における同種血無輸血率はI群87.5%, II群42.9%,III群98.5%であり, 高齢者群であるI, II群間の比較では, rHuEPO投与により有意に同種血無輸血率が向上した. I, III群間の比較においては高齢者群のほうが無輸血率は低値であったが, rHuEPO投与によるHb増加量には差は認められず, また非貧血症例では無輸血率はほぼ同等であった. rHuEPO投与により高齢者においても同種血無輸血手術が十分可能であると思われた.
  • 安倍 十三夫, 渡辺 祝安, 浜谷 秀宏, 井上 聡巳, 佐藤 浩樹, 小松 作蔵
    1995 年 24 巻 5 号 p. 330-332
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心臓腫瘍中, 粘液腫は比較的多いが心臓弁から発生することは稀である. 今回, 心雑音を指摘された65歳の女性の僧帽弁前尖に発生した心臓腫瘍を経験した. 手術は体外循環下に左房切開で16×13×10mm大腫瘍を摘出し, 僧帽弁前尖の腫瘍附着部の茎部は不明瞭で, 表面は平滑で, また, 左室側の僧帽弁前尖には触診にても異常物を認めなかった. また, 僧帽弁逆流試験でも逆流を認めないので僧帽弁置換は施行しなかった. 組織所見で腫瘍は粘液腫であった. 患者は術後6年を経過し, 元気に日常生活を送っている. 僧帽弁由来の粘液腫の手術例の報告は, 非常に稀なので文献的考察を加え報告した.
  • 蜂谷 貴, 金子 寛, 三岡 博, 中村 達, 馬塲 正三
    1995 年 24 巻 5 号 p. 333-336
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    67歳の男性, 総胆管結石の治療中にCTで腹部大動脈瘤を指摘された. 瘤の最大径は60mmで, 瘤前面を横切る馬蹄腎峡部を観察した. 血管造影, Helical CTなどで左右2本計4本の腎動脈を認め, うち2本は瘤より分岐していた. 開腹すると, 左総腸骨動脈から腎峡部に向かう5本目の腎動脈を確認した. 腎峡部の瘤からの剥離は容易で, 峡部を温存し, 大動脈両側総腸骨動脈間をY字型人工血管で置換した. 瘤より分岐した左腎動脈は6mm knitted Dacron を用い再建した. 同じく瘤より分岐した右腎動脈は峡部下面にあり結紮した. 術後は腎機能障害なく, 再建した腎動脈の開存も確認された. 本邦での報告例は自験例を含めて11例で, 5例で腎動脈再建がなされ8例で腎峡部が温存された. 術前に正確な腎動脈分岐診断がなされたものは3例にすぎず, 正確な診断とそれに伴う積極的な腎動脈再建が重要と思われた.
  • 榊 雅之, 小林 順二郎, 大谷 正勝
    1995 年 24 巻 5 号 p. 337-340
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤と泌尿器悪性腫瘍の合併症例2例に対して同時手術を施行した. 症例1は70歳男, 解離性大動脈瘤 (DeBakey IIIb) の診断にて入院したが, 同時に腹部大動脈から右総腸骨動脈にかけての真性動脈瘤および左腎癌が発見された. 約1か月間の保存的療法により偽腔が血栓化されたため, 腹部大動脈人工血管置換術と左腎摘出術を同時に施行した. 症例2は75歳男, 以前より腹部大動脈瘤を指摘されていたが, 腎嚢胞の治療にて泌尿器科入院中に前立腺癌を発見され, 腹部大動脈人工血管置換術と前立腺全摘術を同時に施行した. 2症例共, 術後経過は良好で人工血管に対する感染兆候は認めず, 約1か月後には悪性腫瘍に対する補助療法にスムーズに移行できた. 泌尿器悪性腫瘍に合併した腹部大動脈瘤に対する一期的手術は, 手術順序および到達法に注意すれば安全に行え, 有効な方法であると考えられる.
  • 岡本 順子, 佐々木 進次郎, 麻田 邦夫, 武内 敦郎
    1995 年 24 巻 5 号 p. 341-343
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    人工血管にMRSA感染を生じ, 治療に難渋した症例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する. 症例は62歳の女性. 真性の胸部下行大動脈瘤に対し1990年11月27日人工血管置換術を施行したが, 1992年3月喀血をきたした. グラフト遠位吻合部の出血が肺に穿通したものと診断し, 4月に吻合部の切除, 再置換術と左肺下葉合併切除を施行した. 吻合部よりMRSAを検出し, 胸腔内洗浄にもかかわらず2週間後に再度遠位吻合部の縫合不全による出血をきたした. 上行大動脈-腹部大動脈バイパスを作成したのち, 2回目の手術で用いた人工血管を除去し, 大網充填を行った. しかし同年8月に, 初回手術後残存していた大動脈グラフト近位部にも縫合不全による出血をきたしたので, 遺残人工血管を除去し, 大動脈を左総頸動脈末梢で縫合閉鎖した. イソジンによる胸腔洗浄でMRSAは陰性化し, 軽快退院した.
  • 竹谷 哲, 九鬼 覚, 松村 龍一, 奥田 彰洋, 高橋 由美子
    1995 年 24 巻 5 号 p. 344-346
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は55歳, 女性. 1993年6月ごろ, 右上腕を打撲したが無症状のため放置していた. 7月ごろより同部位に拍動性腫瘍を触知した. Digital subtraction angiography (以下DSA) では右上腕動脈に1.5×1.5cmの瘤形成を認めた. 手術所見では瘤壁は正常部と連続性をもち, 全層が保たれていた. 瘤切除後, 端端吻合を行った. 病理組織学的には, 瘤壁は動脈硬化性変化に乏しく, 三層構造が保たれており, 真性動脈瘤と診断した. 鈍的外傷による真性上腕動脈瘤の報告は稀であり, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 長谷川 豊, 石川 進, 大滝 章男, 佐藤 泰史, 坂田 一宏, 高橋 徹, 狩野 基, 小谷野 哲也, 鈴木 政夫, 森下 靖雄
    1995 年 24 巻 5 号 p. 347-350
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    患者は78歳, 男性で, ペースメーカーの入れ換え術後, 遺残電極の感染による皮下膿瘍から敗血症となった. 体外循環を用いて心停止下に右房を切開し, 疣贅を伴う感染リード3本を摘出した. 細菌培養ではメチシリン-セフェム耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) が検出された. 術後はバンコマイシンなどの抗生物質投与を行い治癒せしめた. ペースメーカー感染, とくにMRSAによる敗血症症例では, 心内膜病変の確認・感染巣の完全摘除のため体外循環を用いて直視下にリードを抜去することが望ましい.
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