1995 年 24 巻 6 号 p. 377-379
症例は68歳男性. 約1週間の間隔をおいて2回の背部痛を訴え緊急入院. X線写真上左第1弓が両発作の間に著明に突出した. CT上弓部大動脈が左胸腔前方へ大きく膨隆し下行大動脈左側に三日月状の低吸収域がみられ血栓閉塞型解離の像を呈した. 手術所見では, 非常に脆弱な大動脈瘤壁の内膜が広範囲に破綻脱落し, 肥厚癒着した左縦隔胸膜により胸腔への破裂がかろうじて抑制されていた. 破裂した部分から漏出した血液が縦隔胸膜内側に沿い流出しておりこれが血腫を形成して下行大動脈遠位側に連続し胸部CT上三日月状陰影として観察されたものと思われた. この症例のような大動脈瘤破裂は外科的治療が第1選択で, 保存的に観察しうる DeBakey 分類III型の血栓閉塞型解離との鑑別診断が重要であると考えられた.