日本心臓血管外科学会雑誌
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24 巻, 6 号
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  • 小宮 達彦, 河内 和宏, 今井 克彦, 白神 幸太郎, 河野 智, 神崎 義雄
    1995 年 24 巻 6 号 p. 351-354
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    開心術後7日目以降に外科的心嚢ドレナージを施行した22例 (開心術全体の1.9%) を対象とし, 心嚢液の性状が血性で心嚢液のヘマトクリット値が患者血液のヘマトクリット値の50%以上をB群 (7例), 50%以下のものをD群 (9例), 淡血性 (漿液性) のものをE群 (6例) に分けて検討した. B群はE群と比較して, 術後抗凝固療法の使用頻度が高く (100% vs 37%, p<0.05), トロンボテストが低下(15%以下) したものが多く (71% vs 17%, p<0.05) 体外循環時間が長い傾向にあった (260±74分 vs194±49分, p<0.05). 抗凝固療法の使用は, 心嚢内出血が原因と考えられる遅発性心タンポナーデの危険因子となりうる.
  • 大庭 聡, 小須賀 健一, 浦口 憲一郎, 山名 一有, 明石 英俊, 藤野 隆之, 広松 伸一, 比嘉 義輝, 磯村 正, 大石 喜六
    1995 年 24 巻 6 号 p. 355-358
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    最近では, juxtarenal aortic occlusion (JAO) に対する手術成績が向上し, 比較的安全に anatomical bypass (ANA) が施行できるようになってきた. しかし, JAOには注意を要すべき病態があり, その適用に慎重でなければならない. 1984年より1993年までの10年間に経験したJAOに対する手術症例17例を対象とした. 主訴は, 間歇性跛行が多く, 12例 (70.6%) に認められた. 急性増悪例を2例 (11.8%) に認めた. 手術方法は, 原則として anatomical bypass (ANA) 15例 (88.2%) を施行したが, 腹部大動脈石灰化の高度な2例 (11.8%) に対しては, extra-anatomical bypass (EXT) を行った. 入院死亡は, 急性増悪例2例と全身状態不良例1例の3例であり, いずれもANAを行った症例であった. 早期合併症は, 急性腎不全1例, 亜イレウス2例であった. 遠隔期合併症は, 心筋梗塞2例, 脳梗塞1例, 末梢側吻合部動脈瘤2例であった. 全身状態不良例, 急性増悪例, 大動脈高度石灰化例では, extra-anatomical bypass を選択すべきである.
  • 加藤 智栄, 美甘 章仁, 古永 晃彦, 南 佳秀, 鈴木 一弘, 浜野 公一, 杉 和郎, 藤村 嘉彦, 壷井 英敏, 江里 健輔
    1995 年 24 巻 6 号 p. 359-362
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    DeBakey I型解離性大動脈瘤手術13例に対し, 解離に起因する術前, 術後合併症の問題を検討した. 9例に上行大動脈置換を, 4例に上行弓部大動脈置換を施行した. 術前合併症として大動脈弁閉鎖不全(AR)3例, ショック4例, 心タンポナーデ5例, 心虚血2例, 脊髄虚血1例があった. 術後合併症として, 下肢虚血2例, 脊髄虚血2例, 腹部臓器虚血1例, ARの増悪1例がみられた. 術後30日以内の生存率は85%で, 死亡の2例は緊急の上行大動脈置換, 冠動脈バイパス施行例であった. 腹部臓器虚血症例は病院死し, 脊髄虚血に陥った2例は対麻痺を残した. 心, 腹部臓器, 脊髄の虚血例に問題があった. 上行弓部大動脈置換では術後30日以内の死亡はなく, 術後解離に起因する合併症を少なくすると考えられた. 術前状態が比較的良好な患者や待機手術が可能な場合は上行大動脈置換より上行弓部大動脈置換を行うべきと考える.
  • とくにゼラチン被覆 knitted Dacron 人工血管の拡大について
    杉田 隆彰, 渡田 正二, 尾上 雅彦, 野島 武久, 勝山 和彦, 中嶋 康彦, 山本 理江, 田畑 良宏, 松野 修一, 森 渥視
    1995 年 24 巻 6 号 p. 363-367
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    われわれは, 腹部大動脈瘤手術においては woven Dacron 人工血管の使用を原則としていたが, 1991年9月よりプレクロッティングの不要な zero porosity のゼラチン被覆 knitted Dacron 人工血管(Gelseal®) の使用を開始した. しかし, 術後6例中4例に不明熱の出現を認め, 術後人工血管径は最低25.0%, 最大43.8%, 平均31.8±7.2%とコラーゲン被覆 woven Dacron 人工血管 (Hemashield®) に比し有意 (p=0.0003) に拡大し, 1992年9月にてその使用を中止した. ゼラチン被覆 knitted Dacron 人工血管 (Gelseal®) の植込みに際しては, 胸部大動脈だけでなく, 腹部大動脈においても術後の拡大に注意し, 人工血管径をCTまたはエコーなどにより経過観察する必要があるものと考えられた.
  • 重光 修, 葉玉 哲生, 森 義顕, 木村 龍範, 宮本 伸二, 迫 秀則, 添田 徹, 内田 雄三
    1995 年 24 巻 6 号 p. 368-372
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    破裂性腹部大動脈瘤31例に対し緊急手術を行い, 6例 (19%) を手術死亡にて失った. このうち, 腹部限局型の解離性大動脈の破裂を4例経験した. 症例1: 53歳の女性で, 人工血管の中枢側吻合を一部解離した部の偽腔壁に吻合したため, 術後同部の拡大がみられた. 現在経過観察中である. 症例2: 78歳の男性で, 術中に中枢側の吻合部の止血を完全に行いえず術死した. 症例3: 57歳の男性で中枢側の解離腔をフェルトで補強し端端吻合を行った. 術後経過は良好である. 症例4: 66歳の男性で, 術前に解離を疑った. 中枢側は全周をフェルトで補強し解離腔を閉鎖し人工血管を端端吻合した. 術後経過は良好である. 全例, 胸部に解離は認められなかった. 末梢側は外腸骨動脈に端側吻合した. 腹部限局型の解離性大動脈の破裂症例では解離の術前診断とフェルトによる吻合部の補強および端端吻合による偽腔閉鎖の上, 全周の確実な吻合が手術成績の向上に重要であると考えられた.
  • 藤田 雄司, 大楽 耕司, 森景 則保, 豊田 秀二, 藤岡 顕太郎, 善甫 宣哉, 江里 健輔
    1995 年 24 巻 6 号 p. 373-376
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    閉塞性動脈硬化症 (ASO) に対する大腿-膝窩動脈 (F-P) バイパス術において術中グラフト血流量 (ml/min) を測定し, グラフト開存率に及ぼす影響を末梢側吻合部別に検討した. 末梢側吻合部が above knee (AK) の23肢で平均グラフト血流量は122.6, below knee (BK) 17肢で57.4であった. AKで120以上 (n=12) のグラフト3年累積開存率は100%, 120未満 (n=11) のそれは80.8%と後者で有意に (p<0.05) 開存率の低下が認められた. BKで55以上 (n=9) のグラフト3年累積開存率は62.2%, 55末満 (n=8) のそれは50%で2群間に有意差を認めなかったが, 高流量のグラフトに高い開存率が得られた. 早期閉塞 (術後1か月以内) した5症例はいずれもBKであった. 術中のグラフト血流量測定は, 術後のグラフト開存性を予測する上で一つの指標になると考えられた.
  • 大加戸 彰彦, 中島 隆之, 椎名 祥隆, 廣田 潤, 開沼 康博, 秋山 一也
    1995 年 24 巻 6 号 p. 377-379
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性. 約1週間の間隔をおいて2回の背部痛を訴え緊急入院. X線写真上左第1弓が両発作の間に著明に突出した. CT上弓部大動脈が左胸腔前方へ大きく膨隆し下行大動脈左側に三日月状の低吸収域がみられ血栓閉塞型解離の像を呈した. 手術所見では, 非常に脆弱な大動脈瘤壁の内膜が広範囲に破綻脱落し, 肥厚癒着した左縦隔胸膜により胸腔への破裂がかろうじて抑制されていた. 破裂した部分から漏出した血液が縦隔胸膜内側に沿い流出しておりこれが血腫を形成して下行大動脈遠位側に連続し胸部CT上三日月状陰影として観察されたものと思われた. この症例のような大動脈瘤破裂は外科的治療が第1選択で, 保存的に観察しうる DeBakey 分類III型の血栓閉塞型解離との鑑別診断が重要であると考えられた.
  • 西森 秀明, 広瀬 邦彦, 福冨 敬, 小田 勝志, 籏 厚, 浅野 宗一, 山城 敏行, 小越 章平
    1995 年 24 巻 6 号 p. 380-383
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    閉塞性動脈硬化症による右浅大腿動脈閉塞に対して, 右大腿-膝窩動脈バイパスを施行後7年めに総大腿動脈急性閉塞をきたし下肢切断術を施行した. 術後1週目より発熱, 紅斑, 下痢が出現し, その後著明な白血球減少, 血小板減少を呈し死亡した. 患者には術後貧血のため輸血を行ったが, 保存血を使用したにもかかわらず皮膚生検にてGVHDが疑われた. 通常GVHDは新鮮血輸血後に認められ本例のように保存血が原因となることはまれである. 文献的考察とともに本例における発症の要因について検討した.
  • 松田 成人, 岡田 稔, 谷口 巌, 山家 武
    1995 年 24 巻 6 号 p. 384-387
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    交通外傷に伴う胸部大血管の損傷は, 受傷直後に致死的な場合が多く, 臨床の場において遭遇する機会は比較的少ない. 最近, われわれは鈍的胸部外傷による胸部大動脈解離の1手術治験例を経験したので報告する. 症例は26歳, 男性. 自動車乗車中, 交通事故に遭い, 前胸部を強打, 当院搬送となった. 左前胸部の収縮期雑音と上・下肢間に40mmHgの血圧差を認めることから, 胸部大動脈の異常が疑われたが, 胸部CT検査で縦隔血腫を認めず, 血行動態が安定していたことから, 意識障害, 両側血気胸および肺挫傷の治療を優先した. 受傷3週後の大動脈造影で大動脈峡部に弁状構造物を認め, 外傷性胸部大動脈解離と確定診断した. 瘤状変化あるいは解離の進行を思わせる所見を認めず, 受傷より2か月後, 遠心ポンプを用いた補助循環下に人工血管置換術を施行し, 良好な結果を得た.
  • 山下 輝夫, 山下 長司郎, 安宅 啓二, 芳村 直樹, 岡田 昌義
    1995 年 24 巻 6 号 p. 388-391
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    薬剤抵抗性の難治性心房粗動を伴った高齢者二次孔型心房中隔欠損兼肺動脈弁狭窄症に対して, 心房中隔欠損部のパッチ閉鎖, 肺動脈弁形成術, さらに術中高周波 ablation による右房内 macroreentry 切断術を一期的に施行し, 良好な結果が得られた1症例を経験した. 高齢者心房中隔欠損症では, 長期間の心房負荷のため, 上室性不整脈を合併する頻度が高く, 術後管理に難渋したり, 抗不整脈剤の長期投与が必要となるケースが多い. 心房粗動を合併した症例に対する術中 ablation は, 短時間で安全に施行でき, 術後抗不整脈剤の服薬から解放され, 患者の quality of life を高める有用な術式であると考えられた.
  • 大淵 俊朗, 宮入 剛, 稲葉 博隆, 水野 明
    1995 年 24 巻 6 号 p. 392-394
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全を合併した心大血管手術の術後管理に術後早期から使用した持続的血液濾過透析 (CHDF) が有効であった2症例を経験した. 症例1は透析歴はないが慢性腎不全を指摘されていた74歳男性で, 腹部大動脈瘤破裂に対しY字人工血管グラフト移植術を施行した. 症例2は10年前から慢性維持透析中の55歳男性で, 大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症に対し大動脈弁置換術を施行した. 両症例とも血行動態が不安定な手術当日からCHDFを使用したが, 大きな血圧変動は認められず, 大量輸血にもかかわらず血液電解質濃度はほぼ正常範囲内に保たれた. CHDFは任意に除水量設定が可能なうえ緩徐に除水するため, 血行動態に与える影響が少なく, 容易な水分・電解質管理を可能にした. CHDFは慢性腎不全合併症例の術後早期からの管理に有用であると考えられた.
  • 竹田 誠, 柳生 邦良, 小塚 裕, 近田 正英, 古瀬 彰
    1995 年 24 巻 6 号 p. 395-397
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    前胸部痛・ショックを主訴とした34歳男性に対しAAEおよび急性大動脈解離破裂の診断にて緊急手術を行った. 解離は大動脈基部に限局し, 右冠状動脈はほぼ全周に近く解離が及んでいたが, 末梢側には離断を認めなかったため冠状動脈入口部の再建を行った. 手術は composite graft を用いて大動脈基部置換術を行ったが, 冠状動脈口の吻合に際して独自の工夫を加え冠血行再建をより確実なものとした. 急性解離における冠血行再建法を中心に, 今回のわれわれの方法について文献的考察を加え報告する.
  • 平井 二郎, 佐藤 伸一, 丹生 智史, 神田 圭一, 土井 潔, 岡 隆宏
    1995 年 24 巻 6 号 p. 398-400
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    ニット製ダクロン人工血管非吻合部動脈瘤の1例を経験したので報告する. 症例は35歳女性で, 11年前, 大動脈炎症候群による胸部下行大動脈の狭窄に対し, ニット製ダクロン人工血管を用いバイパス術を施行した. 今回左季肋部の有痛性拍動性腫瘤を主訴に入院となり, CT, 血管造影検査などで人工血管動脈瘤と診断した. 手術は瘤化した人工血管を切除し, woven polyester 製人工血管を用い同じ経路にバイパス術を施行した. 切除した人工血管は, 肉眼的に縦方向の繊維断裂を認め, 拡張部分の光顕所見はダクロン繊維数の減少を示していた. また, 走査電顕所見ではダクロン繊維の径の不均一さ, 亀裂を認めた. 人工血管の非吻合部での瘤化の原因としては種々のことが考えられるが, ニット製ダクロン人工血管移植患者では, 瘤化を考慮した長期にわたる経過観察が必要であると思われた.
  • 宮本 隆司, 葉玉 哲生, 森 義顕, 重光 修, 木村 龍範, 宮本 伸二, 迫 秀則, 添田 徹, 柴田 興彦, 内田 雄三
    1995 年 24 巻 6 号 p. 401-403
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤-腸管瘻は腹部大動脈瘤破裂の特殊な形であり予後不良で手術成功例は稀である. 今回われわれは腹部大動脈瘤-S状結腸瘻の一手術例を報告する. 症例は腹部大動脈瘤の診断にて経過観察中であった58歳男性で, 腹痛・腰痛・乏尿を主訴に来院, 臍部を中心に手挙大の拍動性腫瘤を触知, 疼痛を訴え緊急入院した. 入院後5日目大量下血を生じショックに陥った. 腹部大動脈瘤-腸管瘻と診断し動脈瘤切除と right axillo-bifemoral bypass 術および Hartmann 手術を行った. 緊急手術を施行し術後発症した後腹膜膿瘍は持続的経皮ドレナージにて治癒したが術前より合併していた拡張型心筋症のため術後4か月半で死亡した. 腹部大動脈瘤は破裂や消化管瘻などの合併症をきたす前に早期手術を施行することが最重要であると思われた.
  • 植松 正久, 小澤 修一, 山下 長司郎, 安宅 啓二, 岡田 昌義
    1995 年 24 巻 6 号 p. 404-410
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    多臓器阻血 (脳, 腎, 上肢, 腸管) を併発した Stanford A型急性解離性大動脈瘤症例を緊急手術により救命した. 症例は34歳男性. 急激な胸部痛にて来院. CTおよび血管造影等の検査で, Stanford A型急性解離性大動脈瘤と診断し, 緊急手術 (上行大動脈置換術) を施行した. 術後, 脳梗塞, 腎不全, 上肢阻血からMNMS (myonephropathic metabolic syndrome), 腸管虚血が併発したが, 保存的治療ならびに開腹術 (下行結腸切除術) にて救命し, 軽快退院した. 通常, 本症のように臓器阻血を伴う解離性大動脈瘤は重篤であり, その予後は極めて不良である. さらに, 的確な診断および阻血臓器に対するタイミングの良い対策が患者の予後を決定する. また, 本症の術前後の管理として血圧のコントロールが最も重要となるが, 臓器阻血の予防には, 重要臓器への灌流にもたえず注意を払うことが肝要である.
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