抄録
無脾症候群24例に対する外科治療の成績と Fontan 型手術 (以下F手術) に至る問題点について検討した. 24例中F手術の適応となったのは5例 (20.8%) であった. 11例に総肺静脈環流異常を合併しており, うち6例が肺静脈閉塞を呈していた. 4例に対して総肺静脈幹-心房吻合を施行したが, 手術成績は不良で, 4例中2例は手術死亡, 1例は遠隔死亡, 現在, 1例が生存中である. これら6例を除いた18例では, 肺動脈狭窄合併例は9例中5例 (55.6%) がF手術の適応であるのに対して, 肺動脈閉鎖合併例は9例中1例もF手術の適応になっていない (p<0.05). 原因として, 肺動脈成長度, 肺動脈形態, 肺血管抵抗, 肺動脈圧, 房室弁逆流, 単心室機能等を検討したが, 両群間に有意な差を認めたのは肺動脈の成長と肺動脈の変形狭窄であった. 肺動脈閉鎖例では早期の動脈管の切離および肺動脈形成と適切な肺血流の維持が肝要である.