抄録
人工心肺 (CPB) 下開心術により顆粒球エラスターゼ (GEL), フィブロネクチン (FN) が凝固線溶系にどのように影響を与えるか検討した. CPB開始前 (Pre), CPB直後 (Post), 術後1日 (PD1), 術後2日 (PD2) で採血し, GEL, FN, フィブリノーゲン (Fib), プロトロンビン時間 (PT), FDP, Dダイマー (D-D), プラスミン・プラスミンインヒビター複合体 (PIC), アンチトロンビンIII (AT III) を測定した. GELは Post で最高値, FNは Post で最低値を示した. Post で Fib, PT, AT IIIが最低値, PICが最高値を, PD1でFDP, D-Dが最高値を示した. CPB時間とPD1のGELと正の相関を示した. GELとD-Dの関係は Post, PD1, PD2で正の相関を示した. また, GELとPICはPD1において正の相関を示した. 以上よりCPBによりGELが増加し, FNが低下した. GELはCPB時間が関与しているものと推察され, D-D, PICの線溶系因子, 特に2次線溶に影響を与えるものと思われた.