日本心臓血管外科学会雑誌
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急性重症心不全に対する機械的補助循環の有用性と問題点
IABP, PCPS同時使用の経験
田中 久史柳谷 晶仁数井 暉久
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1996 年 25 巻 2 号 p. 80-85

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抄録

近年, 経皮的カニューレ, 遠心ポンプ, 人工肺を含めた全回路ヘパリンコーティングの経皮的心肺補助装置 (PCPS) が, 急性重症心不全例の循環補助として急速に普及してきている. 今回, 筆者らは, 5例の急性重症心不全例に対し, 大動脈内バルーンパンピング (IABP) と全回路ヘパリンコーティングしたPCPSを併用した. いずれも大量のカテコラミン, IABPでも循環維持不能の症例であった. PCPS開始後は, 平均補助流量が約2.3l/min, 中等量のカテコラミンで血行動態は安定し, 良好な循環補助効果が得られた. PCPS施行中, 賦活化凝固時間は低値で維持したが, 血栓形成, 出血などの合併症は認められなかった. 4例が離脱し, 2例は社会復帰している. PCPSの適応, 適用時期, 至適流量などについては未だ議論のあるところであり, その施行に関しては慎重を要するが, 薬物療法やIABPの限界を越えた重症心不全に対し, IABPとの併用は有効な治療手段であると考えられた.

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