日本心臓血管外科学会雑誌
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Stanford B型急性大動脈解離による腸管虚血に対し上腸間膜動脈へのバイパス術を行った一例
森本 喜久向原 伸彦麻田 達郎樋上 哲也大保 英文顔 邦男岩橋 和彦小澤 修一
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1996 年 25 巻 6 号 p. 415-418

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抄録

近年, 大動脈解離の治療成績は向上したが, 臓器虚血をきたした症例の治療成績は未だ不十分である. われわれは Stanford B型急性大動脈解離による腸管虚血症例に対して上腸間膜動脈 (以下SMA) へのバイパス術を行い良好な結果を得たので報告する. 症例は36歳, 男性, Marfan 症候群. 突然の激しい前胸部痛を自覚し, 近医を受診. CTにて Stanford B型大動脈解離の診断を受け, 当院を紹介された. 入院時, 強い腹痛とアシドーシスを認めた. 大動脈造影にて大動脈解離に伴う腸管虚血と診断した. 初回手術は腹部大動脈にて開窓術を施行したが, 効果不十分であったため, 翌日, 大伏在静脈グラフトを用いた左総腸骨動脈-SMAバイパス術を施行し, 血行再建に成功した. 本術式は侵襲が少なく簡便で効果の大きい術式であり, 大動脈解離に伴う腸管虚血に対する第一選択術式と考えられた.

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