抄録
症例は59歳男性. 後方より自動車に衝突された. 骨折はなかったが両膝窩部の裂傷, 挫傷を負い, 右下腿の冷感と右膝窩動脈以下の動脈拍動の欠如を認めた. 下肢動脈造影にて右膝窩動脈の断絶所見を認めたが, 受傷直後にもかかわらず良好な側副血行により下腿の血流が比較的よく保たれており, 膝窩部に汚染された創があるために, 皮膚の裂傷と周囲の炎症が治癒した後に血行再建の方針とした. 表皮創治癒後の受傷後14日目に自己大伏在静脈グラフトを用いて膝窩動脈の置換術を施行した. 術後経過は良好で下腿血流は良好となり, 高ミオグロビン血症等の合併症もなかった.