日本心臓血管外科学会雑誌
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26 巻, 2 号
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  • 最大静脈還流速度 (MVO) を用いて
    服部 隆司, 軸屋 智昭, 三井 利夫
    1997 年26 巻2 号 p. 73-76
    発行日: 1997/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大伏在静脈 (SV) を用いた冠状動脈血行再建術 (CABG) 後に出現する下肢浮腫の成因を下肢最大静脈還流速度 (MVO) を手術前後で測定することにより検討した. I群を術後下肢浮腫が発生したCABG例 (n=6). II群を術後下肢浮腫が発生しなかったCABG例 (n=4). III群は下肢静脈を採取しなかった開心術例 (n=6) とした. MVOは straingauge plethysmography を用いて測定した. MVOの変化で有意差を認めたものは, I群のSV採取肢術前/術後: 35.0±13.6/23.9±7.6ml/min/100ml tissue (n=6, p=0.04) で, I群のSV採取肢の術前MVO値が若干高い傾向を示した. II群, III群での手術前後およびSV採取肢, 非採取肢のMVOの変化には有意差は認めなかった. I群の2例に術後静脈造形を, 6例に血管エコーを行ったが静脈血栓を疑わせる所見はなかった. CABG後のSV採取肢の浮腫は, 下肢静脈還流機能がSV採取によって低下したために発生するものと考えられた.
  • 磯村 正, 佐藤 了, 林田 信彦, 丸山 寛, 久冨 光一, 東 隆也, 有永 康一, 赤須 郁太郎, 小須賀 健一, 青柳 成明
    1997 年26 巻2 号 p. 77-82
    発行日: 1997/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    最近施行した冠動脈バイパス (CABG) 356例のうち, 上行大動脈に硬化性病変を有した59例についての術式, 手術成績の検討を行った. CABGでは可及的に動脈グラフト (AG) を用いるか Sequential graft を用い, AGを平均1.3枝/人 (内胸動脈 (ITA) 50例56枝, 胃大網動脈 (GEA) 17枝, 下腹壁動脈3枝) 用いた. 上行大動脈の石灰化を26例に認め, 4例では右腋窩動脈より送血を行った. 大伏在静脈 (SVG) の中枢側吻合を51例に必要としたが, このうち30例で動脈壁に手術操作を追加した. 術後病院死亡は2例 (非心臓死) で, 脳神経障害はみられなかった. 上行大動脈に強い硬化性病変を認める例でのCABGは困難であるが, 送血部位として右腋窩動脈は有用で, 上行大動脈壁へのSVGの吻合は1か所にすべきで, pedicled graft としてのITA, GEAは極めて有用であった. このような例では手術手技の注意深い工夫により術後の脳合併症を可及的に防ぐことができたものと考えられた.
  • 河内 和宏, 山崎 和裕, 石井 修, 小宮 達彦, 中村 智宏, 神崎 義雄
    1997 年26 巻2 号 p. 83-86
    発行日: 1997/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    体外循環手術後の低酸素血症を予測する因子について検討した. 術後人工呼吸器から離脱可能であったCABG単独症例53例を対象とした. 実測70%以上の高濃度酸素吸入を必要とした症例群 (H群)29例と70%以下の酸素吸入を行った群 (L群) 24例について周術期おける各種因子との関係について検討した (H群vs L群). 術前因子では body mass index (25.6±3.5vs. 23.3±2.8, p=0.012) がH群において有意に高値であった. Respiratory index は両群ともに体外循環前後で低下するがH群においてはとくに抜管後より低下遷延していた. H群中3例は再挿管を要し全例晩期死亡した. 肥満例 (BMI≥26.5) では周術期を通じ有意にRIは低下遷延していた. 術前より低酸素血症を予測する因子は乏しいが肥満症例に対しては厳重な呼吸管理が要求されると思われた.
  • 杉田 隆彰, 渡田 正二, 勝山 和彦, 中嶋 康彦, 山本 理江, 森 渥視
    1997 年26 巻2 号 p. 87-89
    発行日: 1997/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    近年, 血中トロンボモジュリンは血管内皮細胞の障害程度を示す新しい分子マーカーとして注目されている. われわれは腹部大動脈瘤手術中の血管内皮障害を調べる目的で血中トロンボモジュリンを測定したので報告する. 対象は腎動脈下の腹部大動脈瘤に待機的手術を施行した9例で, 性別は全例男性, 年齢は46~74歳 (平均64.9歳) であった. 血中トロンボモジュリンの測定は手術前, 大動脈遮断直前, 大動脈遮断解除直後, 大動脈遮断解除1時間後, 3時間後, 18時間後に, 一側の大腿静脈より採血し, EIA法にて行った. トロンボモジュリンは大動脈遮断直前には術前より有意に低下したが, 遮断解除3時間後に増加し, 術前値との有意差は消失し, 以後とくに有意な変化は認められなかった. これらの結果から, 腹部大動脈瘤手術中は血中トロンボモジュリン値が増加するような血管内皮障害は発生していないと考えられた.
  • 山崎 一也, 相馬 民太郎, 小菅 宇之
    1997 年26 巻2 号 p. 90-95
    発行日: 1997/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Continuous warm blood cardioplegia (CWBC) の術後急性期の心機能における優位性を cold crystalloid cardioplegia (CCC) を対照して比較検討した. CABG症例をCWBC群 (21例) とCCC群 (15例) に分け, ICU入室時, 1POD, 2PODの心機能, CK, CKMB値と, ICU入室時, 入室後6h, 12h, 18h, 24hのカテコールアミン使用量を測定し比較検討した. 自己心拍再開率はCWBC群が高率だった. 各時点のCIはCWBC群のほうが高値であった. ICU入室時のLVSWI, LVWIもCWBC群で高値であった. RVSWI, RVWIは各時点で両群間に差がなかった. Dopamine, dobutamine 使用量はCWBC群のほうが少なかった. CK, CKMB値はCWBC群のほうが低値であった. これより離脱後心機能や心筋逸脱酵素においてCWBC群のほうがCCC群より優れた結果を示していた.
  • 高沢 有史, 橋本 明政, 青見 茂之, 中野 秀昭, 田鎖 治, 八巻 文貴, 坂橋 弘之, 小柳 仁
    1997 年26 巻2 号 p. 96-100
    発行日: 1997/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    胸腹部大動脈瘤手術では再建時の臓器虚血が問題であり補助手段の選択が重要である. 当施設では1987年より遠心ポンプによる左心バイパス法を採用し (I群: n=16), 1991年より熱交換器つき人工肺を併用し手術を施行している (II群: n=9). 大動脈再建範囲は腎動脈起始部を越えた症例がI群2例 (12.5%), II群4例 (44.4%) とII群でより広範囲に手術が施行された. 平均肋間腰動脈再建数はI群2.1か所に対しII群は4.2か所と多かった (p<0.005). 左心バイパス時間はII群で長かった (p<0.001) が出血量, 輸血量は共にII群で少なかった. 術中I群では低体温が7例 (44%),低酸素血症が5例 (31%) に発生したがII群では認めなかった. 手術死亡はI群3例, II群は1例であった. 対麻痺はI群の1例のみでI, II群共に術後呼吸器合併症や腹部臓器障害は少なかった. 胸腹部大動脈瘤手術において, 補助手段として人工肺併用左心バイパス法の使用により長時間安定した呼吸循環補助を施行しえた.
  • 林 載鳳
    1997 年26 巻2 号 p. 101-104
    発行日: 1997/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    プラーク破裂が症状発現の契機と考えられる下肢閉塞性動脈硬化症の2例を経験した. 主訴はいずれも亜急性に出現した下肢痛である. 血管造影では総腸骨動脈に狭窄がみられ, 同部ではニッシェ様の造影剤流入所見が認められた. 病変部を切除して人工血管置換術を施行し症状の改善をみた. 病理所見では, 動脈硬化巣の上流寄りの部でプラークが破裂し, 血流が流入したものと診断された. 本報告例ではプラーク破裂が閉塞性動脈硬化症の症状発現の契機と考えられたが, 同様の機序で下肢の急性動脈血栓症が発生する可能性がある.
  • 金子 高穂, 桜沢 健一
    1997 年26 巻2 号 p. 105-107
    発行日: 1997/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    われわれは下肢静脈瘤の術前検査として全例にカラードプラ法を施行している. 今回本法によって発見され, 手術にて確認された大腿動静脈逆位を伴った下肢静脈瘤の1例を経験したので報告する. 症例は69歳女性. 30年来の両下肢静脈瘤で難治性下腿潰瘍および欝滞性皮膚炎を合併していた. カラードプラ法を施行したところ左鼠蹊部にて大腿静脈が大腿動脈の外側に存在しており, 大伏在静脈は大腿動脈を乗り越えるようにして内側から大腿静脈に合流していて, 手術時にも同様の所見を確認した. このような異常は本邦で過去に報告例はなく極めて稀と思われた.
  • 本邦53例の検討
    前田 英明, 根岸 七雄, 石井 良幸, 新野 成隆, 鈴木 克行, 河野 秀雄, 瀬在 幸安
    1997 年26 巻2 号 p. 108-111
    発行日: 1997/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    最近, 膝窩動脈外膜嚢腫の2例を経験した. 症例は27歳, 59歳の男性で間歇性跛行を主訴として来院, 血管造影, 螺旋CT, MRI (magnetic resonance image) を施行し, 本症の確定診断を得た. 術式は2例とも嚢腫切除を施行した. 1例を後方到達法で, 1例は内側から小切開を加え, 腹腔鏡用光学子管を挿入し, 腹腔用剥離鉗子を用いて術中に血管内超音波, 血管内視鏡下に, 嚢腫切除を施行した. 教室の中岡らがすでに報告した1例と今回の2例を加え, 調べえた本邦報告例53例を集計し, 診断方法, 治療手技の変遷を文献的考察を加えて報告した.
  • 土井 一義, 樗木 等, 堺 正仁
    1997 年26 巻2 号 p. 112-115
    発行日: 1997/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は, 67歳, 男性. 主訴は不明熱, 腰痛. 現病歴, 1995年3月下旬より持続する, 難治性の不明熱と腰痛で, 4月当院入院. 精査, 加療中に腹部の拍動性腫瘤を認め当科紹介となった. 血液検査で白血球12,300/mm3, CRP13.0mg/mlと炎症所見を認めた. エコー, CT検査で腹部大動脈瘤と瘤破裂の所見を認めたため, 緊急手術を行った. 腹部大動瘤は周囲の膿瘍形成などなかったが, 瘤内は血栓と融解壊死組織が認められた. 腹部大動脈瘤をはじめ感染所見を認める組織は可及的に除去, 洗浄し, 人工血管で置換した. 術後の経過は良好で, 再感染の所見もなく退院した. 感染性腹部大脈瘤は稀であることや易破裂性, 感染性であることより, 診断, 治療時期, 手術法などの問題点を有する. この点に関し, 本治験例をもとに考察を加えた.
  • 内田 敬二, 近藤 治郎, 井元 清隆, 戸部 道雄, 尾崎 直, 坂本 哲, 岩井 芳弘, 浦中 康子, 松本 昭彦
    1997 年26 巻2 号 p. 116-119
    発行日: 1997/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    DeBakey III b型急性大動脈解離による急性腹部大動脈閉塞症例を経験した. 症例は59歳, 女性. 突然胸背部痛, ついで両側下肢の冷感, しびれ感が出現し当院入院. 両側大腿動脈拍動触知せず. 造影CTで DeBakey III b型急性大動脈解離と診断した. 大動脈造影では腹部大動脈が腎動脈の分岐直下で閉塞していた. もともと蛇行していた部位で偽腔が真腔を圧迫したことによる閉塞と思われた. 下肢虚血症状が進行したため両側腋窩大腿動脈間バイパス術を施行した. グラフトは径8mmの woven Dacron を使用し, 解離発症6時間後に血行再建を完了した. 術後症状は速やかに改善した. 腋窩大腿動脈間バイパス術は長期開存成績は劣るものの手術侵襲は小さく, かつ緊急の血行再建が可能である. 大動脈解離急性期でも安全に施行でき, MNMSの予防の面からも本症に有用な術式と思われた.
  • 飯田 充, 根岸 七雄, 石井 良幸, 新野 成隆, 前田 英明, 鈴木 克行, 佐久間 佳規, 新野 哲也, 吉野 孝典, 瀬在 幸安
    1997 年26 巻2 号 p. 120-123
    発行日: 1997/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Total hip arthroplasty 後, 5年経過してから, スクリューによる左外腸骨仮性動脈瘤を生じ, 左下肢急性動脈閉塞症を頻回にきたした症例を経験した. 症例は48歳, 男性. 主訴は左下肢の冷感, しびれ感. 昭和53年に両側変股症に対して, 両側人工骨頭置換術が施行され, 1988年に左, 1990年に, 右人工骨頭再置換術, 臼蓋形成術が施行された. 1995年12月3日に主訴が生じ, それ以来, 1995年12月4日, 1996年1月18日, 同年1月21日に, 3回急性動脈閉塞症を発症し, そのつど血栓除去術を施行した. 回転 Digital subtraction angiography で左外腸骨仮性動脈瘤と診新し, 瘤切除, 血行再建術, スクリュー切除術を施行し, 良好な経過をたどった.
  • 饗場 正宏, 松尾 義昭, 森保 幸治, 村上 厚文, 山田 眞, 井上 恒一, 高場 利博
    1997 年26 巻2 号 p. 124-127
    発行日: 1997/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は63歳, 女性. 約4年前に狭心症, 僧帽弁閉鎖不全症 (MR) のため冠状動脈バイパス術2枝(LITA to LAD, AO to D1), 僧帽弁輪形成術 (Kay法) を受けた. 心不全のため再入院, 心臓カテーテル検査でITAグラフトは開存していたがMRの増強を認め再手術を行った. 手術は胸骨正中再切開でアプローチし, 心筋保護はITAグラフトを遮断せずに逆行性持続冠灌流を行った. 僧帽弁は前尖に穿孔がみられ Carbo-Medicus 弁29mmで置換した. 術後はLAD領域の-時虚血を生じたが軽快退院した. 再手術時の胸骨正中切開による視野と逆行性持続冠灌流による心筋保護は優れているが, 灌流中にITAグラフトが遮断できない場合はITAグラフトの灌流領域に対する心筋保護に注意する必要がある.
  • 山崎 一也, 蔵田 英志, 矢野 善己, 佐野 仁勇
    1997 年26 巻2 号 p. 128-130
    発行日: 1997/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性. 後方より自動車に衝突された. 骨折はなかったが両膝窩部の裂傷, 挫傷を負い, 右下腿の冷感と右膝窩動脈以下の動脈拍動の欠如を認めた. 下肢動脈造影にて右膝窩動脈の断絶所見を認めたが, 受傷直後にもかかわらず良好な側副血行により下腿の血流が比較的よく保たれており, 膝窩部に汚染された創があるために, 皮膚の裂傷と周囲の炎症が治癒した後に血行再建の方針とした. 表皮創治癒後の受傷後14日目に自己大伏在静脈グラフトを用いて膝窩動脈の置換術を施行した. 術後経過は良好で下腿血流は良好となり, 高ミオグロビン血症等の合併症もなかった.
  • 林 載鳳, 佐々木 秀, 川本 純
    1997 年26 巻2 号 p. 131-133
    発行日: 1997/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は83歳の男性. Borrman III型胃癌により幽門狭窄症状を呈しており, 直径7cmの腹部大動脈瘤を合併していた. 胃切除術と腹部大動脈人工血管置換術を同時に施行した. 術後経過は良好であった. 手術適応と手術術式, とくに同時手術に関して文献的考察を加えて報告した.
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