症例は, 67歳, 男性. 主訴は不明熱, 腰痛. 現病歴, 1995年3月下旬より持続する, 難治性の不明熱と腰痛で, 4月当院入院. 精査, 加療中に腹部の拍動性腫瘤を認め当科紹介となった. 血液検査で白血球12,300/mm
3, CRP13.0mg/mlと炎症所見を認めた. エコー, CT検査で腹部大動脈瘤と瘤破裂の所見を認めたため, 緊急手術を行った. 腹部大動瘤は周囲の膿瘍形成などなかったが, 瘤内は血栓と融解壊死組織が認められた. 腹部大動脈瘤をはじめ感染所見を認める組織は可及的に除去, 洗浄し, 人工血管で置換した. 術後の経過は良好で, 再感染の所見もなく退院した. 感染性腹部大脈瘤は稀であることや易破裂性, 感染性であることより, 診断, 治療時期, 手術法などの問題点を有する. この点に関し, 本治験例をもとに考察を加えた.
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