抄録
Y型人工血管置換術後遠隔期に発症した下肢虚血を合併した DeBakey I型急性大動脈解離を2例経験した. 症例1は63歳女性, 55歳時に腹部大動脈瘤にて, 症例2は Marfan 症候群の28歳男性, 21歳時に腹部大動脈瘤の破裂にてY型人工血管置換術をうけ, 今回I型解離を発症し来院. 上行大動脈に entry を有し, 解離はY型人工血管中枢側吻合部まで進展, 偽腔が真腔を圧排し下肢虚血を合併していた. 発症より8時間, 6時間に手術を施行した. 症例1は術中破裂にて失ったが, 症例2は大動脈基部~弓部全置換を行い救命した. Y型人工血管置換術後遠隔期の急性大動脈解離の発症は稀で, 下肢虚血を合併した報告例はない. 術前の血行動態について考察するとともに, 補助手段, 術中モニターについて報告した.